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シーン6:徴税官との会話
「お目覚めですね」
声は、すぐ近くからだった。
卓也が顔を上げると、窓口の向こうに黒いローブの人物が立っていた。
フードの奥の顔は見えるが、表情は薄い。
「こちらは、魔王領第一徴税庁です」
言葉は丁寧で、抑揚がない。
説明というより、事実の読み上げに近かった。
卓也は一度、周囲を見回す。
石の壁、並ぶ書類、静かな空気。
やはり病院には見えない。
「……病院ではないんですか」
自分でも驚くほど、声は落ち着いていた。
徴税官は小さく首を振る。
「いいえ」
間を置かず、続ける。
「転生者の方は、まずこちらへお越しいただく決まりになっております」
当然の手順を説明するような口調だった。
卓也は、その言葉を頭の中で反芻する。
転生者。
決まり。
まずこちら。
意味は分からないが、
少なくとも、騒ぐ場面ではないことだけは理解できた。
ここは役所だ。
そして、自分は呼ばれた。
そういう空気だった。




