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シーン2:魔王ザイゼル登場
執務室の奥に、ひとりの男が座っていた。
玉座ではない。
高くもなく、飾り気もない執務机。
その上に広げられているのは、分厚い帳簿だった。
男は、魔王ザイゼルだった。
肩書きは財務大臣。
それ以上の説明は、必要なかった。
紙をめくる音だけが、静かに響く。
視線は帳簿から離れない。
やがて、低い声が落ちてくる。
「転生者か」
顔は上がらない。
「話は聞いている」
それだけだった。
歓迎でも、拒絶でもない。
興味すら、そこには含まれていない。
卓也は一歩進み、軽く頭を下げる。
名乗らない。
弁明しない。
余計な言葉は、発しなかった。
この場所では、
言葉は――
必要な分しか、存在しないと分かっていた。




