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シーン13 締め
卓也は、夕暮れの街を歩く。
《生活均衡区》の石畳は、相変わらず整っていて、段差ひとつない。
店の看板も、灯りの明るさも、規格通りだ。
だが――耳を澄ますと、違う。
どこかで、低い声が混じる。
笑い声ではない。
不満でもない。
「今日は、少し余裕があるんです」
「うちは、まだ厳しくて」
そんな言葉が、風に乗って流れてくる。
卓也は歩きながら、思う。
同じなら、安心だ。
だが、
違いを無視した安心は、
声を消す。
税率が揃っていた街に、
少しだけ、言葉が戻った。
均衡は、まだ保たれている。
秩序も、壊れていない。
それでも確かに、
この街は、同じではなくなり始めていた。
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