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シーン6 卓也の観察
卓也は、差し出された帳簿に視線を落とした。
数字は、驚くほど整っている。
行と行の間に、乱れがない。
高所得者。
低所得者。
無収入者。
区分はある。
だが、その先に書かれている金額は――同じだった。
誰も多くない。
誰も少なくない。
帳簿をめくっても、結果は変わらない。
頁が変わっても、数字は揃ったままだ。
(シンプルだ)
計算はいらない。
比較もいらない。
理由を問う必要すらない。
だが、卓也の指が、紙の端で止まった。
(……逃げ道がない)
払えるかどうか。
苦しいかどうか。
間に合わないかどうか。
それらを考慮する欄が、どこにもない。
帳簿は、ただ静かに告げていた。
――同じであることが、前提なのだと。




