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シーン5:目覚め
冷たさで、意識が戻った。
背中に感じるのは、石の感触。
床は硬く、体温を遠慮なく奪ってくる。
卓也はゆっくりと目を開けた。
天井は高い。
装飾は少なく、石造りのまま露出している。
空気は静まり返っていて、ざわめきも、歓声もない。
祝福の声も、ファンファーレも、なかった。
体を起こすと、周囲が見えてくる。
正面に並ぶ窓口。
壁際には整然と並んだ書類棚。
その間を、黒いローブをまとった職員たちが、足音を立てずに行き来している。
誰もこちらを気に留めていない。
ここがどこなのかは分からない。
だが、妙に見覚えがあった。
卓也は小さく息を吐く。
「……役所だ」




