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シーン2 生存税の掲示
街角の掲示板の前を、人々は足早に通り過ぎていく。
木枠に収められた大きな板。
そこには太く、迷いのない文字が並んでいた。
――生存税
――一律税率
――全市民、同額負担
下段には、やや小さな文字。
「公平は安心です」
「例外は混乱を生みます」
言い切りの文。
疑問の余地はない。
だが、立ち止まって読む者はいない。
誰もが知っているからだ。
知らない者が、この街に長くいることはない。
老いた男も、子どもを連れた母親も、
掲示板に目を向けることなく通り過ぎる。
視線は前へ。
足取りは一定。
内容を理解しているからではない。
理解する必要がないほど、日常に溶け込んでいる。
税はここでは、支払うものではなく、
空気のように「あるもの」だった。
卓也は、掲示板の前で一瞬だけ足を止める。
誰も気にしない。
この街では、
読むという行為そのものが、少しだけ浮いて見えた。




