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◆ 第5話 第四税目官編 『同じなら、安心です』 シーン1 均された街
朝の通りは、静かだった。
魔王領・市街地《生活均衡区》。
石畳はよく整えられ、道幅も一定。
並ぶ店の外観は似通っていて、看板の大きさも、色味も大きく違わない。
パン屋、雑貨屋、薬草店。
どの店先にも値札が下がっている。
――同じ桁。
品物は違っても、数字の並びは揃っている。
高すぎもせず、安すぎもしない。
安心できる価格。
通りを行き交う人々の服装も同様だった。
布の質はほぼ同じ。
色合いも落ち着いていて、目立つ装飾はない。
貧しさは見えない。
贅沢も、見えない。
誰も困っていない。
少なくとも、困っているようには見えない。
だが――
誰にも、余裕がない。
歩く速さは揃い、立ち止まる者は少ない。
視線は前だけを向き、周囲を見渡すことがない。
卓也は、その中を歩きながら思った。
揃いすぎている。
角がない。
出っ張りもない。
だから引っかかることもない。
だが同時に、
掴めるものも、ない。
整えられた街は、静かで、安全で、均等だった。
そして、どこか息苦しかった。




