シーン9:体感
徴収庫の外で、冒険者の一人が立ち止まった。
解除の知らせは、大きくは伝えられていない。
ただ、何かが変わったことだけは、体が先に理解していた。
剣を握る。
ずしり、と重さが来る。
思わず、指に力が入る。
「……重いな」
小さく呟く。
だが、眉はひそめない。
重い。
それだけだ。
振ってみる。
今度は、刃が空気を切る前に、腕がそれを受け止める。
重心が手元に返ってくる。
違和感はない。
「こうだったよな」
誰に言うでもなく、そう思う。
鎧を着た別の冒険者も、肩を回す。
軋む音が、きちんと鳴る。
HPが戻ったことは、数値で確認しなくても分かる。
息を吸ったとき、胸の奥まで空気が入る。
スキルの感触も同じだ。
使えるかどうかではなく、
使えば疲れる、という当たり前が戻っている。
室内の端で、ツイチョウがその様子を見ていた。
相変わらず、柔らかな表情。
「ちゃんと、重いですね」
ぽつりと、そう言う。
肯定でも、評価でもない。
ただの確認だ。
冒険者は、もう一度剣を握り直した。
重い。
だが、納得できる。
それは初めて、
自分の力が、自分のものとして戻ってきた感覚だった。




