シーン6:核心
卓也は剣から手を離し、ゆっくりとツイチョウを見た。
声は低く、抑揚もない。
問い詰める調子ではなかった。
「評価額、誰が決めました?」
部屋の空気が、わずかに止まる。
ツイチョウの笑みは消えない。
だが、瞬きの間が一拍だけ遅れた。
「……基準に基づいております」
即答ではない。
選ばれた言葉だった。
卓也は追撃しない。
ただ、続く言葉を待つ。
ツイチョウは視線を机上の書類に落とす。
「装備の性能、過去の戦果、平均的な危険度」
「周囲への影響、想定される被害」
並べられる項目は多い。
どれもそれらしい。
「それを総合して――」
そこで、言葉が途切れた。
卓也は、静かに続ける。
「“誰が”です」
責める響きはない。
確認するだけの口調。
評価の方法ではない。
評価する主体の話だ。
ツイチョウは、初めて言葉に詰まった。
机の上の書類は、勝手に数値を示している。
だが、その数字を書いた手の存在が、どこにもない。
「……我々が」
そう言いかけて、止まる。
我々とは誰か。
税目官か、局か、制度か。
ツイチョウは、ゆっくりと息を吐いた。
軽さを保ってきた声に、わずかな重みが混じる。
「……明確には、定義されていません」
その瞬間、
部屋に置かれた模型の剣が、かすかに鳴った。
まるで、重さを思い出しかけたかのように。




