◆ 第4話 第三税目官編 第三税目官編 『軽くなりましたね』 シーン1:徴収庫の朝
石造りの天井が高く、朝の光が細い帯になって床を照らしている。
ここは装備管理局――通称、徴収庫。
冒険者たちはいつも通り集まっていた。
鎧を身につけ、剣を腰に下げ、盾を背負う。
見た目は何一つ変わらない。
だが、動きが妙に軽い。
一人の冒険者が、準備運動のように剣を振る。
刃は空を切り、鈍い金属音が返ってくる。
――カン。
響きが浅い。
叩いたはずの空気に、手応えがない。
別の冒険者も、何気なく剣を持ち替える。
持ち上げた瞬間、わずかに首を傾げるが、それ以上は気にしない。
「こんなものだ」と、体が勝手に納得している。
鎧の擦れる音も、どこか軽い。
金属同士が触れているはずなのに、重さが途中で抜け落ちている。
重いはずのものが、重くない。
だが、誰もその違和感を口にしない。
ここではそれが普通だった。
卓也は、少し離れた場所からその光景を見ていた。
冒険者の手元、剣の軌道、音の質。
――軽すぎる。
力が足りないわけではない。
技量が落ちたわけでもない。
重さそのものが、最初からそこにない。
誰も気づいていないのではない。
気づく必要がない世界になっている。
徴収庫の朝は静かだった。
誰も怒らず、誰も疑わず、ただ軽い装備を身につけて、次の仕事に向かう準備をしている。
金属はそこにある。
だが、重さだけが、きれいに抜き取られていた。




