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シーン8:余韻
宿屋の主人が、カウンター越しに廊下を見渡す。
「……今日は、静かですね」
独り言のような声だった。
遅れて降りてきた客の一人が、
軽く肩を回しながら答える。
「少し、寝すぎました」
それだけだった。
謝罪も、言い訳もない。
誰も、急かさない。
第3話・ラスト
卓也は、その光景を眺めながら思う。
現世の税には、期限がある。
納期限があり、
終わりが決まっている。
だから、人は待てる。
だから、休める。
時間は、逃げない。
だが、
終わらない支払いは、
人を休ませない。
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