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シーン7:静かな解除(時間系税の停止)
エンタイ・キンの手が、止まった。
書類をめくる指が、
初めて動きを止める。
しばらく、そのまま。
それから、静かに言った。
「……期限が、設定されていませんね」
声は低く、
確認に近かった。
誰かに向けた宣言ではない。
ただ、事実を口にしただけだ。
机の上の精算表から、
数字の増加が止まる。
待機税。
睡眠税。
延滞税。
計上は、一時停止された。
鐘も鳴らない。
告知もない。
部屋の時計だけが、
変わらず針を進めている。
宿屋の朝は、静かだった。
いつもなら聞こえてくる足音が、
なかなかしない。
廊下は空いたまま、
扉も閉じられたままだ。
一人、
また一人と、
布団から出てこない。
目覚ましの魔導鐘は鳴らない。
精算窓口の前にも、
列はできていなかった。
誰も騒がない。
遅れているとも、
怠けているとも言わない。
ただ、
少し長く眠っているだけだった。




