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シーン6:核心
卓也は、精算表から目を離した。
時計ではなく、
エンタイ・キンを見る。
声は低く、
抑えられている。
「この税、いつまで払うんですか」
問いは短い。
責める響きも、
焦りもない。
ただ、
終わりがあるかどうかを確かめるための言葉だった。
部屋の中で、
時計の針だけが動き続ける。
その音が、
わずかに大きく聞こえた。
エンタイ・キンは、すぐには答えなかった。
一瞬だけ、考える。
それから、机の上の書類に手を伸ばした。
精算表。
条文。
運用規定。
頁をめくる音が、静かに響く。
だが、
どこにも「納期限」は記されていなかった。
エンタイは、顔を上げる。
「生活している限り、です」
言ってから、わずかに間を置く。
「時間が進む限り」
続けたが、
自分の声が、答えになっていないことに気づいている。
それは、説明ではなかった。
終わりを示していない。
ただ、
続くことを言い換えただけだった。
エンタイは、再び沈黙した。
時計の針が、
変わらぬ速さで進んでいる。




