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シーン5:観察
卓也は、室内を見回した。
壁の時計。
机の上の時計。
棚の隅に置かれた小さな置き時計。
どれも、止まらずに動いている。
次に、精算表に目を落とす。
待機税。
睡眠税。
延滞税。
数字は、一定の間隔で増えていた。
一行進むたび、
わずかに、確実に。
卓也は表情を変えない。
だが、頭の中では整理していた。
――支払い続ける前提だ。
減る項目がない。
清算された形跡もない。
いつ払っても、
また次の時間が積み上がる。
終点が、設定されていなかった。
卓也は、時計に視線を戻す。
針は進む。
ただ、それだけのことのはずなのに。




