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シーン3:税目官室
税目官室は、静かな個室だった。
壁は厚く、
外の音はほとんど届かない。
室内には、時計がいくつも掛けられている。
丸いもの、角張ったもの、
古い意匠のものに、新しい魔導式のもの。
だが、針の進み方は揃っていなかった。
一秒ごとに刻むものもあれば、
わずかに遅れ、
あるいは早く進むものもある。
それでも、
誰も直そうとしない。
机の向こうに、男が座っていた。
中年。
無表情。
だが、こちらを急かす様子はない。
名札が、静かに光っている。
――第二税目官
――エンタイ・キン
彼は、卓也を見て、
ただ一度、うなずいた。
それだけで、
時間がここでは別のものとして扱われていると、
分かる気がした。




