表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『納付書を握りしめたまま異世界に転生した男は、期限までに帰ってこれるのか』  作者: 南蛇井


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

22/76

シーン6:問

卓也は、少し間を置いた。


 反論するでもなく、

 声を荒らげることもない。


 ただ、確認するように口を開く。


「それ、まだ所得じゃないですよね」


 声は低く、静かだった。


 しかし、その一言で――

 空気が止まった。


 ゲンセンの手が、わずかに止まる。


 隣の受付が、書類をめくる音をやめる。


 後ろの列から、足音が消える。


 誰も声を上げない。


 だが、誰も先に進めなくなった。


 その問いは、責めていなかった。


 ただ、

 順番を確認しただけだった。



ゲンセンは、すぐに答えなかった。


 否定もしない。

 声を荒らげることもない。


 まず、引き出しを開けた。


 束ねられた条文集を取り出し、

 指で頁を送る。


「ええと……」


 言葉を探しながら、視線を走らせる。


 次に、慣れた調子で言い直す。


「これまでは、この運用で問題は――」


 そこで、言葉が止まった。


 前任者の名が挙がり、

 過去の事例がいくつか語られる。


 だが、どれも答えにならない。


 いつ、所得になるのか。


 受け取った瞬間か。

 依頼が完了した時点か。

 報酬が確定した時か。


 どこにも、明確な線は引かれていなかった。


 ゲンセンの口が、閉じる。


 条文集が、机の上に伏せられる。


 沈黙が落ちた。


 誰も責めない。

 誰も助け舟を出せない。


 制度だけが、

 言葉を失っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ