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シーン2:庁舎前の待機スペース
外に出ると、空気が少しだけ軽くなった。
庁舎の正面には、石で作られた長いベンチが並んでいる。
そこには、すでに何人かの市民が腰を下ろしていた。
皆、静かだった。
話し声もなく、ただ順番を待っている。
卓也も空いている端に座る。
しばらくして、一人の青年が近くに腰を下ろした。
両腕には、書類の束を抱えている。
紙の量からして、今日一日分ではなさそうだった。
動きに無駄がない。
ここに慣れているのが、すぐに分かる。
「初めてですか?」
青年は、視線だけをこちらに向けてそう言った。
声は穏やかで、特別な感情はない。
卓也は一瞬だけ考え、短く答える。
「……はい」
青年は小さくうなずいた。
「転生者の方ですね」
それは確認だった。
驚きも、戸惑いもない。
まるで、
初めて来庁した人間を見分ける
いつもの手順の一つのようだった。
卓也は、その反応を見て理解する。
この世界では、
転生者は珍しい存在ではない。
少なくとも、
驚くほどのことではないらしい。




