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路 金色の星―京海物語(青木家サーガ第2作)  作者: 光闇居士


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5. 嘘の世界に灯る、真実の誓い

雷の勝利は、完全なものではなかった。京海たちは、英雄から「罪人」へと転落したが、命だけは繋ぎ止めた。彼らは、京海の提案通り、農場で最も汚く、最も厳しい部署へと、バラバラに配置されることになった。梁は再び石切り場へ、紅は養豚場へ、そして京海は、沼地の葦を刈り取る、最も孤独で過酷な作業へと送られた。

京海は、一人、腰まで泥水に浸かりながら、巨大な鎌で葦を刈り続けた。

彼女の心の中で、かつて信じていた世界は、完全に崩壊した。社会主義も、共産主義も、その美しい言葉の裏に隠された、剥き出しの権力欲と、人間性を破壊するシステムの冷酷さを、彼女は知ってしまった。牛棚の老人たちの言葉が、呪いのように、彼女の頭の中で響き続けていた。

しかし、彼女は絶望しなかった。

なぜなら、彼女の心の中には、新たな、そして決して揺らぐことのない、一つの真実が灯っていたからだ。

それは、あの狂気の批判大会の壇上で、自分のためにすべてを投げ打ってくれた紅の姿。石切り場へ送られる前、遠くから、心配そうに自分を見つめていた梁の瞳。そして、いつか必ず再会を誓った、上海にいる親友・明の存在。

党が、革命が、どれほど人間性を破壊しようとも、この、人と人との間に生まれる、温かく、かけがえのない絆だけは、本物だ。たとえ、それがこの体制にとって「罪」だとしても、これこそが、自分が命を賭して守るべき、唯一の価値なのだ。

京海は、泥だらけの手で、胸に隠した布袋に触れた。そこには、梁に渡した片割れの、金の腕輪が一つ、静かに眠っている。これは、自分の出自の謎であり、養父の愛の証であり、そして、梁との、声にならない誓いだ。

彼女は、もう、この国を、この党を、信じていない。

彼女が信じるのは、ただ一つ。この地獄のような嘘の世界で、それでもなお、守るべき価値のある、人間の絆だけだった。

この日、京海は、無垢な少女から、真実という名の重い十字架を背負った、一人の戦士へと、完全に変貌した。彼女は、まだ、この国の邪悪なシステムが、いかに巨大で、いかに根深いものか、その全貌を理解してはいない。ただ、彼女は、自分が立っている場所が、輝かしい理想郷などではなく、巧妙に隠蔽された、巨大な嘘の上に成り立っていることだけを、その魂で悟ったのだ。

彼女は、顔を上げた。夕日が、広大な葦の原を、血のように赤く染めていた。

彼女は、これから、この嘘の世界で、どう生きていけばいいのか。

答えは、まだ見つからない。

だが、彼女の瞳の奥には、牛棚の老人たちの顔が、そして、この体制の真実を暴き、いつか必ず本当の自由を勝ち取るという、新たな、そして恐ろしいほどの決意の炎が、静かに、しかし決して消えることなく、燃え始めていた。

彼女の戦いは、終わったのではない。本当の意味で、今、始まったのだ。

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