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路 金色の星―京海物語(青木家サーガ第2作)  作者: 光闇居士


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2. 牛棚という名の煉獄、あるいは歴史の書庫

雷の最初の牙は、最も弱い環である梁に向けられた。しかし、そのやり方は、以前のような直接的な暴力ではなかった。

ある日、梁は、何の理由も告げられぬまま、最も過酷な石切り場での単独労働を命じられた。それは、懲罰であり、見せしめだった。彼を仲間から物理的に孤立させ、その精神を、終わりのない肉体的疲労で削り取ろうという、陰湿で計算され尽くした嫌がらせだった。

次に、紅が標的となった。彼女の党員の父親が、上海での激しい権力闘争の余波を受け、「修正主義を歩む実権派」として失脚し、逮捕されたのだ。その知らせは、雷によって、意図的に農場全体に広められた。紅は一夜にして「反党分子の娘」という、決して拭い去ることのできない烙印を押された。かつて理想の炎に燃えていた彼女の瞳からは光が消え、仲間たちは、まるで汚物でも見るかのように、彼女を避けて通った。紅は、自分が信じてきた党と、愛する父親との間で、その精神を引き裂かれていた。

そして、ついに雷の矛先が、京海へと向けられた。

「京海同志」

雷は、工作組の事務所に彼女を呼びつけ、猫が鼠をいたぶるような、ねっとりとした笑みを浮かべて言った。

「君は、労働模範であり、若者たちの手本だ。君の革命的純粋性は、誰もが認めるところだ。そこで、君に、最も重要で、最も栄誉ある仕事を与えたいと思う」

彼が言い渡した「仕事」。それは、「牛棚ニウペン」での雑用係だった。

牛棚。それは、文字通りの牛小屋ではない。農場の最も奥、葦の原に隣接した、打ち捨てられた倉庫群。そこは、この文化大革命の嵐の中で「打倒」された、年配の共産党幹部たちが、罪人として収容されている場所だった。彼らは、かつて大臣や、将軍や、省の第一書記として、この国の権力の中枢にいた、伝説的な大物たちだった。彼らの名前は、京海が小学校の教科書で、革命の英雄として暗記した名前でもあった。しかし今、彼らは「反党分子」「資本主義の道を歩む実権派」「裏切り者」というレッテルを貼られ、すべての地位と名誉を剥奪され、ここで強制労働と自己批判の日々を送っていた。

牛棚は、農場の若者たちにとって、最も忌むべき、呪われた場所だった。そこにいるのは、生ける亡霊であり、触れれば汚れる「政治的病毒」だと教え込まれていた。その世話係を命じることは、京海に「お前も奴らと同類だ」という烙印を押し、彼女の労働模範としての威信を失墜させ、仲間たちから完全に孤立させようという、雷の最も悪辣な策略だった。彼は、京海がこの屈辱的な任務を拒否することも計算に入れていた。拒否すれば、それは「階級的立場が曖昧である」ことの証拠として、彼女を攻撃する絶好の口実となる。

京海は、雷の思考を、手に取るように読んでいた。彼女は、一瞬の逡巡も見せず、顔色一つ変えずに答えた。

「…分かりました。毛主席の教えに従い、いかなる任務も、光栄に思います。罪を犯した者たちを監視し、彼らの思想改造を手助けすることもまた、革命戦士の重要な務めです」

彼女の心の内を、雷は知る由もなかった。京海の心に宿っていたのは、屈辱ではなかった。それは、歴史の闇の奥、この国の権力の中枢を動かしてきた者たちの、その魂の深淵を、自らの目でのぞき込む機会を与えられたことへの、密かな、そして危険な好奇心だった。

京海は、その日から、牛棚へ通い始めた。

そこは、絶望が、物理的な形をとって澱んでいるような場所だった。床には汚れた藁が敷かれ、空気は、湿気と、糞尿と、そして人間の尊厳が腐敗していく匂いが混じり合って、重く、淀んでいた。

そこに、十数人の老人たちが、幽鬼のように座り込んでいた。かつて何万人もの兵を指揮した将軍は、震える手で、自分の名前さえまともに書けない。かつて国家の経済を動かした大臣は、虚ろな目で、壁のシミを一日中見つめている。彼らの体は、暴力と栄養失調で衰弱しきっていたが、その瞳の奥には、時折、まだ消え去ってはいない、鋭い知性の光や、あるいは飼い慣らされることを拒む、猛獣のような光が、ちらりと覗くことがあった。

京海の仕事は、彼らの食事を運び、排泄物の処理をし、そして彼らが書くことを強要される「自己批判書」を回収することだった。彼女は、黙々と、その仕事をこなした。他の若者たちのように、彼らを罵倒することもしなければ、憐れみの表情を浮かべることもしなかった。ただ、一人の人間として、淡々と、しかし礼儀を失わずに接した。その態度は、彼らに、失われた人間としての尊厳を、ほんの少しだけ思い出させた。

その彼女の態度が、心を閉ざしていた老人たちの、厚い氷の壁を、少しずつ溶かし始めた。彼らは、この若い娘が、自分たちをただの「罪人」として見ていないことに気づき始めたのだ。彼らは、この純粋で、しかし鋼の意志を持つ娘の中に、かつての自分たちの姿を、あるいは、自分たちが失ってしまった何かを、見たのかもしれない。

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