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第9話 オマエ、何モンだ?

第9話 オマエ、何モンだ?




「はぁ、はぁ……な、なぁ、カリス。私たちこれまでどのくらい歩いた?」



 <あァ? んなもん10時間超えたあたりから数えてねェよ>



「じゅ、10時間……? こんだけ歩いて雑魚モンスターしかいないってどゆこと? しかも奥に行けば行くほど数も少なくなってきてるし……」



 <確かに、そろそろ昔やり合ったドラゴンのいる場所が見えてくるはずだがなァ、こんなに魔物が少ないのは少し妙だな>



 カリスは何か考え込んでしまっているのか、それ以降は私が話しかけても適当な返事しかしなくなってしまった。


 しりとりをしてみてもりんご→ごはんで終わらせられるしカリスから始めさせても尻取りペンギンとかいう意味不明な単語で終わらせられる。



「尻取りペンギン? 絶対いないでしょ。しりとりで創作単語だすの禁止!」


 

 <……ちなみに本当にいるぞ。あれはA級モンスターの一種でな。見た目に反して凶暴だから見つけても遠くから狙撃で倒すか、魔法を使って倒すんだぞ。いいか? 近づいて倒そうなんて考えるなよ? 絶対>



「お、おう……」



 いつにも増して真剣な口調な声のカリスに、思わず真面目に返事をしてしまう。


 まぁ、そんなペンギン居るわけないし話半分で聞いていて良さそうだけれど。

 

 ただひたすらに続く一本道を歩き続けること10時間以上、私の体力はそろそろ限界に達しそうであった。


 日本にいた頃は持久走で周回遅れになるくらいには体力が低かったはずなのにここまで歩き続けられたのも、レベルアップの影響だろうか。


 洞窟特有の反響音による不気味さと歩き続けてきたことによる足の疲労を紛らわせるため、大声で歌いながら進む。


 ちなみに歌っているのは「一日一歩三日で三歩」でお馴染み『三百六十五歩のマーチ』である。


 幸せを自ら追い求める姿は、ロマンを自ら追求する者としてシンパシーを感じるのでこの曲は私のお気に入りの曲の一つだ。



「しっあわっせはー あーるいてこないっ だーから あーるいて ゆく」



 <止まれ!!>



「!? な、何!? 急にどうしたの!?」



 大きな歌声をダンジョン内に響かせていた時だった。


 カリスが念話を通じて大きな声で私を制止する。


 体内から響いてくる音に耳鳴りを起こされるという経験は初めてなもので、奇妙な感覚を起こす。



 <この先に、ちっとやばい匂いがするぜェ。……匂うな、イマジ…じゃなくて悪魔族の匂いがなァ!>



「悪魔族……?」



 悪魔族ってあの悪魔族か!? 数ある魔物の中でもずば抜けた知能と魔力を持ち、地獄からの使者と呼ばれるあの悪魔族!?


 ……働く度に貧乏になる店主の元でせっせと働く地獄の公爵とかも居るのだろうか?



 <おい、くだらねェこと考えてる暇はねェみたいだぞ。アイツも俺たちに気づいたみたいだぜ>



「え、え!? マジか、いきなり戦闘にはいる感じ!? 」



 <気ィ、引き締めろよォ……ナグサ。悪魔族ってのは今までの雑魚敵共とは別格の存在だ。油断、すんじゃねェぞ>



 どうやら呑気なことを考えている暇はないらしく、目の前の暗闇からこちらに向かってくる敵に備え、身構える。


 まだかすかにしか見えないが、奥の方からアカリ石が灯き始めるのが分かる。そのスピードを見るに、どうやら相当な速さでこちらに向かってきているようだ。


 点灯する水色の明かりは、いつの間にか目先数メートルの位置にまで近づいてきており……



「お、ナんだニンゲンか。 マたモンスターでモ湧いタかと思っタガ、マぁ、ドっちデモ殺スこト二は変ワンねェか」



 <来るぞ、ナグサ!>



「くっ……!」



「? あァン? イマ、オレ様の攻撃ヲ避けタノか? ニンゲンが? ハはッ、オモシレェじゃネェか!」



 目の前のアカリ石が突如輝き始めたかと思うと、悪魔族と思しき影が私の腹部に鋭い爪を突き刺そうと突進してくる。


 瞬間、カリスの声でかろうじて交わしたが、どうやらそのおかけで悪魔族のスイッチが入ってしまったらしい。


 悪魔族は仮面を被ったようなくぐもった声で高笑いをし始める。



「いきなり攻撃とは貴様には闘う者としての誇りはないのか? せめて自己紹介でもしたらどうだ? あ、ちなみに私の名前は」



「ヤメロ。ニンゲンに名乗ル名ナどナイ。ソレにコレカらコロすニンゲンのヲを聞イてモ意味がナイ」



 どうしよう。


 高笑いを始めた悪魔族に対し何か対策を講じるために会話を通じて時間稼ぎをしようとしたが、あっさりと断られてしまった。



「……そうか。ならば無理やりにでも見てやる『真眼」!」



「な、オマエ、ドコでソレを……?!」


 

――――

 個体名:キール 種族名:悪魔 Lv70

――――

 

 『真眼』を使用し、個体名やレベル、その他にもステータス値や保有スキルなども真眼の影響で全て見通す。



「フハ、フハハハハハ! どれだけ隠そうと無駄無駄ァ! 我が『真眼」の前では何も隠せない裸である思え! キールよ!」



「な、名前マデ、……?!」



 『真眼』最強! 名前だけじゃなくてレベルまで分かるとかもうチートじゃん! レベルの他にも……


 ん?


 あいつのレベル、70だった……?


 見間違えかと思い目をこすって再度ステータスに目をやるが、キールのレベルはバッチリ70だった。



「オマエ、アノ御方二与えラレた我ガ高尚ナ名前を、ニンゲンが、ニンゲン如キが……!! 許セン! 四肢ヲ引キ裂クだケデハ到底許セヌ冒涜だ!!」



 やばい! なんか分からんけど無茶苦茶キレてる!


 確か私のレベルはまだ45......いや途中途中でモンスター倒してたから47か、ってレベル差23は流石に絶望的すぎるだろ!



「まぁまぁそう怒るなよキール。私は、その名前すっごく良いと思うぞキール」



「やかましいわ! オマエの下劣ナソノ口かラ二度とオレ様ノ名前ヲ呼ブナ!」



 憤るキールをなんとかして宥めようとしたがどうやら火に油を注いでしまったようだ。


 キールは持ち前の鋭く長い両手の爪をクロスさせるとカチカチっと刃物を研ぐようにぶつけ火花を散らし、爪をより鋭利なモノにする。



「サッキは躱さレタが今度ハソウはいカネェ! コレデもクラいやガレ!」



 まるで刀のように長く鋭い三本の爪が、再び私の腹部をめがけ突撃してくる。



<ナグサ!!>



カリスの呼び掛けがあっても先程よりコンマ数秒、反応が遅れてしまう。

 

 

 や、やばい! これ本当にまず……






 

「……!? 一度ナラず二度モオレ様ノ攻撃ヲ躱シタ?! 偶然ジャなカッタノか……オマエ、何モンだ? 」



 ステータス値の幸運の値が高かったおかげか、思わず後ろへ後ずさりした右足が地面のコケにとられ、滑ってしまったことでキールの攻撃を寸前で躱す。



「……ふん、2度も同じ手は通用せぬぞキールよ。」



「だカラ名前ヲ呼ブな!!」



 キールが遠巻きに叫んでくる。

 

 あっぶねー……。マジで死ぬかと思った。偶然足元にコケが無かったら本当に死んでた。


 どうやらキールは私が2回も攻撃を交わしたことで本当に実力者だと感じ取ったのか、先程までの猪突猛進ぶりは収まり、遠巻きに私を見つめ警戒している。


 躱した際の言葉も、『感情抑制』を常時使用しているおかげで実力者っぽく返せてはいるが、内心は全身の穴と言う穴から汗が吹き出しそうなくらいには焦っているし、足も震えが止まらない。


 うん。これはダメだ。勝てるビジョンが見えない。



「……ここらが潮時か」


 

 もう少しでダンジョンを制覇できそうな所名残惜しいが、流石にレベル差がありすぎるエネミーに挑むほど、私の肝は据わっていない。せめてもう少しレベルを上げてから出直すとしよう。


 私はジオから預かった脱出石をポケットから取り出し、魔力を込め始める。



「"私が何者なのか"、か……それは私自身にも分からない」



「なッ……! オマエ、逃ゲル気か?! 」



 私がこれから何をしようとしているのか察したか、遠くにいたキールが私に向かって走り出す。


 獲物を逃がすまいと必死の形相で私に迫ってくるキールに向かって、ほんの数秒後脱出できることが確定している私は手の平を向け



「私は柳ナグサ、だ。通りすがりの旅人、今はまだそれでいい。今はまだ、な……。私がこの世界を統べるその時、改めて貴様を葬るとしよう。『コラプサー』」


 

 現状の私の最強スキルを放ち、心地良い光に包まれる感覚に身を任せた―――

 

 

最後まで見て頂いてありがとうございます!(´▽`)

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