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第6話 トレインダンジョン第1階層

第6話 トレインダンジョン第1階層



 どうやら私が『真眼』と叫び使っていたスキルはレベルアップにより手に入れた[鑑定]のスキルだったようだ。

 

 それが判明した後に何度か『鑑定』と叫んでみたが、何故か真眼のように発動することはなかった。


 文字は合っているのに声に出すと違うとか、はたして私が使っていたのは真眼なのか鑑定なのかどちらなのだろうか。



「まぁ、『真眼』の方がカッコイイしいっか」



 呼び方など私にとって些細な問題でしかない。

 

 重要なのは1にカッコ良さ、2にカッコ良さ、そして3にカッコ良さなのだ。






 


「さて、他のスキルはどんなもんかな」


 手をワキワキとさせながらステータス画面を開き、それぞれのスキルに真眼を使用し確認する。


 

 [魔眼]:他者に使用することで、使用した対象の思考を読むことができます

 [感情抑制]: 使用することで、使用者の感情の昂りを抑え、即座に合理的思考へと移行することができます

 [悪魔族耐性]:-常時発動中- 悪魔族からのあらゆる攻撃への耐性が付きます



「よし、視界のぼやけも随分と治まってきたな。文字もよく読める。……にしても強そうなスキル貰いすぎじゃない? やはり私は選ばれた存在だったのか」


 

 いきなりこんなにレベルが上がったり、色んなスキルが貰えたり……これは神に優遇されているとしか思えないほどのVIP対応じゃないか?



「でもなぁ、戦闘系のスキルが1つもないとは……。筋力も1だし、短剣もない。 もし魔物が出たらどうやって戦えばいいんだ。……せめて魔法系のスキルが欲しかったな」


 

 何個かスキルは入手したが真眼を使ってみた所戦闘系のスキルが1つもないとは。


 このダンジョンは騎士団長のジオが危険だと言うほどだし、万が一の時は貰った脱出石で大人しく脱出するか。


 そう考えながら手のひらの上に残っている2つの魔石へと目をやる。


 残りの2つの内、片方はまるで全てを侵食するブラックホールを彷彿させるような漆黒の光沢をもち、その深淵に思わず見入ってしまう。


 もう片方はその漆黒の魔石とは反対に、光の反射で眩いほど白く輝き、所々に水色のラインが入っている。

 

 その白と水色の親和性は非常に高く、文明がそれほど発達していない異世界の中でも特に近未来的要素を感じさせる。


 2つの魔石の対比は正に天使と悪魔。その2つを連想せざるを得ない。


 

「やはり深淵の淵にを彷彿とさせるこの漆黒を見ていると心が休まる。それにこの白の魔石も嫌いではない。所々に見える水縹(みずはなだ)が良い」


 

 手にした2つの魔石に頬ずりをしながら交互に見つめる。


 漆黒は古くから私のような存在に優しくしてくれる。

 やはりこの世の色の中で一番カッコイイのは黒だ。

 その唯一無二の強さは、他のどの色にも勝る、正にブラックホール。


 白もいい。

 どこかの誰かが200色あると言っていたが、この魔石はおそらくその200色の中でも特出して輝いている。

 厳密に言うと水色が入っているため白1色というわけではないが、その水色が逆に良いアクセントとなっていて、メカメカしいものを感じざるを得ない。



「じゃあ、いっただきまーす」



 両手を合わせ合掌し、2つの魔石を同時に口へ放り込む。



「うげっ、また鉄の味…………でもさっきとちょっと違う……?」

 


 期待していたわけではないが、やはり味は変わらず鉄の味だった。だがその味は、赤の魔石ほど濃くなくなかった。

 

 2つ同時に食べたはずなのに、不思議だ。


 口に放り込んでから数分後、ざりざりとした舌の上の感触がなくなると同時に対策となるか分からないがとりあえず耳を塞ぐ。



 <レベルが上がりました。上昇レベル20→40。全てのステータス値が上昇しました。[スキル]レベルが上昇しました。[スキル]:[鑑定Lv.10][魔眼Lv.10][感情抑制Lv.3][悪魔族耐性Lv.10]。新たに[スキル]を獲得しました。[コラプサーLv.1][天使族耐性Lv.1][創造機械Lv.1] 新たに【称号】を獲得しました。獲得【称号】:【天使族キラー】>


 

「痛い痛い痛いし長い!」



 耳を塞いでもやっぱり無駄だった。

 相変わらず脳内にうるさく響く機械的な女性の声に嫌気がさす。


 それにしても長い。長すぎる。2つの魔石を吸収したせいなのか、前回の倍くらいは声が続いていた。



 <……はぁ、はぁ、はぁ…………んくっ>


 

「……ん?」



 気のせいだろうか、今アナウンスの人が息切れしてた声が少し聞こえた気がする。


 

 <はぁ、はぁ…………特定の[スキル]レベルが最大値に達したので[スキル]結合及び進化を行います。[スキル]:[鑑定Lv.10]、[魔眼Lv.10]の2つが結合し、[スキル]:[真眼]へと進化します。……完了しました。>


 

 いや絶対息整えてたな。思えば声量でゴリ押しされて気づかなかったけど今まで息継ぎ無しで言っていた気がする。


 ……というか


 

「今、『真眼』がどうこうって言ってた?」



 今、何か重大な事が起こっているのはアナウンスの声を聞いた事で理解できる。

 

 急ぎ足でステータス画面をに再び目をやると、やはり先程までの私のステータス値は今のアナウンス通りのステータス値に変化していた。

 

 新たに獲得したスキルは多種多様で、それらのスキル名に、流石の私でも違和感を覚える。


 [真眼]に[天使族耐性]、[創造機械]、そして日本語で"崩壊した星、ブラックホールに成る前の恒星"の意味を持つ[コラプサー]……



「これ全部、魔石食べる前に私がイメージしてたモノばかり……まさか、まさかなのか……?」


 

 思えば赤の魔石を吸収する前にも、吸血鬼のイメージをしていたし、もしそれが関係しているなら急に[悪魔族耐性]なぞが付いたのも納得がいく。


 [魔眼]や[感情抑制]も同様だ。馬車のおじさんとの会話で私が発言したモノである。


 

「『ステータス』……『真眼』ーーッ!?」



 ステータス画面を開き、右上に表示されている、先刻までは二度とみたくないとさえ思わされた私の固有スキルへと目をやり、真眼を使用する。


 『真眼』は[鑑定]と比較にならないほど優れた精密さを持っているようで、文字化けなどもなく、綺麗に細かく文字が読める。


 

 <ユニークスキル:中二病>:このスキルは、所持者の言動を周囲のモノへ信じ込ませる。また、魔石吸収効率が大幅に上昇し、吸収した魔石の質、数次第ではレベルアップ時に次の恩恵を得られる。

・その独特のセンスと想像力で新スキルを創造できる



「…やはり、私の想像した通りのスキルだったみたいだな」


 ユニークスキルの説明欄を見るに、私はレベルアップする度に新たなスキルを獲得できるのだろう。おそらく、無制限に。そして私の想像力次第ではどんな種類でも、だ。


 独特のセンス、とはシステムに馬鹿にされている感は否めないが《ユニークスキル:中二病》がチートスキルであることは間違いないので責めないでおこう。


 


 ―――そうやって真眼を使い一通りスキルの説明を読み終えた後



「クックック……新たに手に入れたこのスキルたちが私にどのような恩恵を与えるのか、試してみようじゃないか!」



 眼帯を装備し直した私は、包帯の巻かれた左腕を振り上げ、ダンジョン探索に乗り出したのだった


 



 






「ーッ! やはりいくら第1階層と言っても魔物は居るな……ま、まさか、アイツらはッー!!」



 うきうきで走り出した数分後、私は早速モンスターに出くわしていた。


 腰に手を当て、眼帯を抑える私に対峙するのは3体の人型モンスター。


 小柄な身長や貧相な体つき、尖った耳に剥き出しの牙、そしてなにより緑色の肌! こんなに特徴的な外見をしているのは異世界名物ゴブリンに違いない!



「はぁはぁ……まさかこの目で本当にガチのゴブリンを見ることができる日がくるとは! コスプレや人形じゃないマジゴブリン! もっと近くで見てみたいけど流石にあの棍棒で殴られたら筋力1の私は耐えられなさそう……」



 リアルゴブリンに出会ったことで思わず我を忘れ興奮しながら見つめる私の視線に引いているのか、ゴブリンたちは怯えるように肩を震わせ、3体で身を寄せあっている。


 3体はそれぞれ手に棍棒を持っているが、あの細腕で本当に棍棒は振り回せるのだろうか。



「……ッ! キキキャーーッ!!」



「ーッ!? あっぶな……!」



 数メートル離れたところで観察していると、痺れを切らしたのか3体のうち気の強そうな1体が私に向かって駆け出し、両手で持った棍棒で殴りかかってくる。


 が、やはりその細腕に太い棍棒は重たすぎるのか、その殴り掛かる速度は遅く、私でも難なく躱せることが出来るほどだった。



「キ、キキャァァー……ギャッ!?」



「……何がしたいの、コイツら」



 余程体重が軽いのか、力回せに振り回した棍棒に足を取られ、突撃してきた勇気あるゴブリン1号はそのまま壁に突進し、全身を強く打って気絶し、そのまま燃えたあとの木の葉のように消えてなくなった。


 ゴブリンは知力が低いとは分かっていたが、まさか自重より重い棍棒を振り回して死んでしまうほどアホな生き物だったとは……



「……ま、スキルの試し打ちは残りの2体ですればいっか」



「「!? キ、キャァッ!」」



 気絶した1号から2号と3号へ目線をずらすと、次は自分たちがやられると感じ取ったのか、2体は肩を震わせながら抱きつき合う。



「……ちょっと可哀想だけど、ごめんね。……ゴホン。愚鈍な魔物2体よ、その身、我が力を高めるための贄となれ!『コラプサー』!」



 身を寄せ合う2体を哀れに思いながらも、咳払いで調子を整え、新たに獲得したスキル『コラプサー』を使用する。



「「……キキャ?」」



「あ、あれっ? おかしいな。説明通りだと唱えた後直ぐに……あ」



 唱えたはずのスキルが発動しないことに疑問を感じた瞬間だった。



「「キ、キギャァァァ!!?」」



 2体を指した人差し指から放たれた黒い球体は、私の指先で止まっていたかと思うと、私が瞬きしたと同時、2体の眼前へと移動していた。


 その球体はゴブリンが抵抗する間もなく、一瞬でゴブリンを吸収し、跡形もなく姿を消した。発動した私でも分からないほど、一瞬で。



「…………」



 無事に初のモンスターとの戦闘を終え、討伐後に3対それぞれがドロップした魔石を集めながら私は



「チートスキル、キターーー!」



 文字通りブラックホールのような性能を持つ新スキルに、ガッツポーズしながら1人、興奮を抑えきれなかった。

 



 

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