第5話[スキル]の使い方
第5話 [スキル]の使い方
「な、なんじゃコレ……」
目の前のステータス画面には、思わず目を疑うような光景が拡がっていた。
獲得[スキル]:[鑑定Lv.1] [魔眼Lv.1][感情抑制Lv.1]
[悪魔族耐性Lv.1]
獲得【称号】:【悪魔族キラー】
先程食べた魔石によるレベルアップの恩恵なのか、新たなスキルやら称号やらが、ステータス画面の中に所狭しと並んでいる。
え、魔石ってこんなに簡単にレベル上がるもんなの……?
もしかして私むちゃくちゃ貴重な物貰っちゃったのかな、後で改めてジオに感謝しよう
「確かステータスも上昇したって言ってたな」
獲得スキルや称号も気になるが、ステータスも当然気になる。筋力1という紙装甲ではこれから異世界を生き抜けれる気がしない。
僅かながらの希望を抱き、再びステータス画面を見てみるとそこには
「………………筋力1のままじゃねーか」
相変わらず右横の数字は"1"のままの筋力値があるだけだった。
王女曰く、レベルMAXまで上げれば誰でも同じくらいのステータス値になるとのことだったが、何故か私のステータス値の筋力の値は1のままだった。
他のステータス値も、一気にレベル20になったというのに大して伸びていない気がする。
「比較対象がいないからそう思うだけで実際皆こんな感じなのか……? いや多分きっとおそらくそうだろう」
レベルが20も上がったのにステータス値の伸びがあまりに悪い事は、きっとこの異世界特有のシステムなのだろう。
うん、そう思うことにした。
「確か[スキル]が何個か手に入ってたけど、どうやったら使えるんだろこれ」
目の前に浮かぶステータス画面を見ながら、[スキル]の書かれている欄を見てみる。
[鑑定]や[魔眼]と書かれている所をそれとなく人差し指で押してみるが、どうやらステータス画面に直接触れることは出来ないらしく、何度触ろうとしても指がすかっと振られるだけだった。
困ったな、スキルがあるのに使えないとか宝の持ち腐れがすぎる。
おそらく王城に残ったクラスメイトたちは明日からにでもスキルの使い方などを教わるのだろう。
それに対して私は、この世界に関するなんの教育も受けずにダンジョンにほっぽり出されてしまっている。
今日まで何百何千との異世界ファンタジーラノベを読み込んできた私にとって、この世界に関する知識を身につけたようがつけまいが大差はない。
……が、
「せっかくなら[スキル]使いたいのに……」
使えないモノを持っていても仕方がない。
「しょうがない。こんな時はアレだ!」
ここは1つ、落ち込んだ気分を盛り上げるためにもアレをするしかない。
人にバカにされたり、日本で魔法が使えなかったりして気分が落ち込んでしまっていた時に夜な夜な1人、公園で練習を積み重ねてきたアレをするしかないようだ。
「我が左目に宿りし黒龍よ、力を蓄えし暴竜よ。今こそその真価を見晒せ! 『真眼』! 」
ドクロマークの刺繍のついた眼帯を左目から引き剥がし、華麗に投げ捨てる。
『真眼』(シンガン:真実を見通す眼)とは、使うことで我が左目に封印されし黒龍の力を一時的に借り、森羅万象を即座に読み解くことのできるようになる能力のことだ。
ちなみに夜遅くに公園で使うとタイムパトロール(お巡りさん)に職務質問されるという制約が付いているため、頻繁に使用できない。
いつもなら気分を盛り上げるため星空を見上げ、星座の名称を確認するのに使っていただけだが、今回は違う。
今私が居る場所は異世界だ。この『真眼』さえあれば、万物を見通すことが出来るはずなのだ。
ゆっくりと目を見開き、確認するように周囲を見渡す
「…………?」
幻かと思い、何度か目を擦った後再びゆっくりと目を見開くと、そこには…………
「ほ、ホントに見えた……!!」
目の前に広がる明かりを灯している石の全てに、"アカリ石"という機械的な文字が浮かぶんでいた。
「ほう、"アカリ石" か。随分と安直な名前だな。」
私は目の前に広がる水色に輝く宝石をに手を当て、"アカリ石"という文字の下に陳列している細字を読み、特徴を学んでいた。
所々文字化けしていて全てを正確に読むことは出来なかったが、やはりこれらは魔石などではなく、ただダンジョンに自然生成された光る苔くらいの価値しかない物らしい。
「しかし何故急に『真眼』が使えた……? やはりここが異世界であることが強く関係しているとみて間違いないのか…………ん?」
顎に手を当てながら自問自答していると、水色に輝く壁面に妙な違和感を覚える。
とある一点だけが黄色く輝いているように見えるのだ。
「…………」
その妙な点が気になり、近づいてみると段々と大きくなっていく。
その点が大きくなるのはまるで、私が近づいていくのに呼応しているような速度で…………
「え、コレ私…………?」
壁に近づき、微かに反射する自分の手と手を合わせると、その黄色い点の正体が私の左目であることが分かった。
「まさかこれが『真眼』を使った代償……?」
反射する自分の瞳を覗き込み、確かに黄色に輝いていることを確認する。
見た目こそ変わっているが視覚的には何も問題なく見えるということは、あまり悪い影響はないと考えて良いのだろうか。
それにしても…………
「カッコイイ…………!!!」
カッコ良すぎた。
能力の発動と同時に体の一部が輝くシステムはやはりロマンに溢れている。
日本でも真眼は度々使っていたが、左目の色だけが変わるということはあまりなかった。
というのも、都度都度カラーコンタクトを入れてはいたのだが、1度付けっぱなしで寝てしまい、目の裏に入ったことがトラウマになって以降はつけることは無かったのだ。
「この黄金に輝く瞳! はぁ、はぁ……」
綺麗な輝きを見せる自分の瞳にうっとりしてしまう。
その美しさと言ったら、思わず私の息が荒くなるほどのもので。
その後数十分は反射した自分をみながら色んなポージングを試し、どのポーズが1番瞳をカッコよく魅せれるかを1人競った。
「そうだ、『真眼』を使えば他のスキルの使い方もわかるのでは?」
数十分後、1人真眼トーナメントを終えた私は見事1位に輝いたポージングをとった状態のまま、ステータス画面を見る。
「……なんだ、コレ」
[スキル]の欄を見てみると、[鑑定]の欄が他のスキルより太字で、発光しているのに気づく。
顔を近づけよく見てみると、[鑑定]の横に-発動中-の文字が浮かんでいた。
発動中……? 鑑定なぞ使った覚えもないが、何故発動中の文字が見えるのだろう
……嫌な予感がする
「…………」
1度ポケットにしまった眼帯を取り出し、再び左目へと装着する。ポージングトーナメントの最中何度か試したが、真眼の発動を取り止めるには眼帯の再装着が必要なようだ。
視界の確保が出来ている右目だけでステータス画面へと目をやると、鑑定の横にあったはずの発動中の3文字が消えてなくなる。
「『真眼』!」
再び眼帯を投げ捨てた私は、『真眼』を唱えステータス画面へと再度目をやると
「…………やはりな」
[鑑定]-発動中-
:使用することで、事物の特徴、概要を読み解くことができます
どうやら私が真眼だと思っていたスキルは、ただの鑑定だったらしい