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第3話 《ユニークスキル:中二病》

第3話 《ユニークスキル:中二病》



自分は神に選ばれし存在だと、特別で唯一無二な存在だと、思いっていたのに、思っていたのに......!


なのに......!


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


柳 ナグサ 《ユニークスキル:中二病》


Lv. 1


筋力 1


知力 30


魔力 10


幸運 50



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「ってなんだよ、コレ! 《中二病》 って! 異世界来てまでバカにされるの? 私......」



わくわくしながら開いたステータス画面の右上には《ユニークスキル:中二病》 と表示されている欄しかない。


せっかく異世界に来れたのに、なぜまだ《中二病》だと馬鹿にされないといけないのだろうか。

私はただ、誰にも迷惑かけずに自分の好きなことに没頭しているだけなのに......。


剣と魔法の世界まで来ても、未だ馬鹿にされてしまうことにショックを受けていると、後ろから覗き込んできていたジオが話しかけてくる



「お、おい嬢ちゃん.......この《ユニークスキル:中二病》ってのは......?」



「そうです、私はイタい子なんです。今までタメ口使ってごめんなさいでした」



「え? あ、おおう。 別にタメ口は気にしてないけどよ......」



もう完全に意気消沈した私は、早口でジオに謝り、クラスメイトたちが口々にする《勇者》や、《賢者》、《テイマー》、《エンターテイナー》などといったユニークスキルの名称を聞いていた。



......いや、《エンターテイナー》ってなに?



思わず顔を上げると、それはクラスでよく騒いでいた男子の1人で、周りからはお笑い芸人かよとイジられていた。


私と同レベルくらいのユニークスキル持ちもいるんだな......


私のユニークスキルが《中二病》だとバレてしまえば、きっとイジられるとかじゃなく普通に馬鹿にされるだろうけど。


もう完全に落ち込んでしまった私は、乾いた笑い声をあげ、再び石柱に腰掛けながら石造りの天井を見上げる。

そんな私を見かねてか、ジオはしゃがみ、私の耳に顔を近づけ、ひそひそと話しかけてくる。



「嬢ちゃん、あんたの《ユニークスキル》 最後に"病"って入ってたよな? "チュウニ病"? だっけか。聞いたこともない病気だが、悪いことは言わねぇ。早くこの王城から逃げるんだ」



......?


急にひそひそ話を始めたと思ったら、突然何を言い出すのだろうこのおじさんは。


中二病を何か重大な病だと勘違いしているのだろうか? いや、重大っちゃ重大なのだが.......そこまで大袈裟に言われるものでもない。

ましてや王城から逃げろだなんて......


冗談だろうと受け流そうとすると、ジオは兜の前部分を上へずらし、顔を見せて言ってくる。


その表情は、初めて見た顔でもとても冗談とは思えないほど真剣なもので......



「いいかい、嬢ちゃん。 この世界で《ユニークスキル》 は当人の存在価値に変換されるってのは聞いた話だよな? 俺の場合は《ユニークスキル:先導者》 これのおかげでレイード王国騎士団長へと登りつめることが出来た」



なるほど、ジオの甲冑と剣が他の衛兵たちよりも妙に豪華だったのはジオが騎士団長だったからなのか。


え、じゃあ私、もしかして偉い人にめちゃくちゃ生意気な態度とってた?


大変だ! ここは中世ヨーロッパ風な世界、態度ひとつで首が飛ぶなんて当たり前の倫理観の世界だ。


誠心誠意謝らないと!



「あ、あの、ご、ごめんなさいでした。騎士団長とは知らなかったもので......」



ジャパニーズDOGEZAをかましジオに謝罪すると、違う反応が欲しかったのか、分かりやすく狼狽えながら



「ち、違う! 俺は謝罪を求めてるわけじゃないし、あと本当にタメ口も気にしてないから...... 」



こめかみを押えながら、はぁっと深く息をつくと、ジオは話の続きを語り出す。



「俺は、元々孤児だったんだ。そんな俺が今や一国の騎士団長。この意味が分かるか? 《ユニークスキル》 ってのはそれだけ重要なものなんだよ。そして嬢ちゃんの《ユニークスキル:中二病》 ......。実はな、この国では代々、ユニークスキルに病名や悪魔族の名前とかがが入っているのは、不吉だとかで即刻高難易度ダンジョンへと捨てられる決まりがあるんだ。この意味が分かるか? 嬢ちゃん」



ジオの突然の深刻な情報の告白に思わずゴクリと唾を飲み込む



「それって、脅し、っていうこと......?」



騎士団長であるジオが私にこんな情報を聞かせてくるなんて、はっきり言って脅しとしか思えない。流石に初対面のおじさんをなんの疑いもなく信用できるほど、私の肝は座っていない。


ジオは再びはあっとため息を吐くと私の肩に手を当て、周りを確認したあと、話し出す



「違う、これは脅しとかじゃない。いいかい、嬢ちゃん。この王城から逃げるんだよ! あんたみたいなレベル1の異世界人がレイード王国の辺境にある"トレインダンジョン"に捨てられてみろ、10分と持たずにモンスターたちにズタズタにされるぞ。俺たちは会って数分の仲だが、俺は既に嬢ちゃんを気に入っちまった。だからコレをお前に渡す、コレを使えばどこか遠くへ逃げられるはずだ」



「ジオ......」



「いいか? 俺も立場上、嬢ちゃんの事は上に報告しなくちゃならねえ。だが、その"脱出石"を使えば"トレインダンジョン"からは脱出できるはずだ。悪いが、俺に出来るのはコレだけだ。無事を祈るよ」



ジオは私に向かって紫に輝く小石を渡すと、すっと立ち上がり、王女の元へと向かい始める。



「待って、ジオ!」



初対面で、しかも親切に教えてくれたのを脅しなどと失礼なことを言ったにも関わらず、私に向かって笑顔を向けてくる彼を思わず呼び止める。



「悪い、嬢ちゃん。俺にも家族が居て、養わなくちゃなんねぇ。だから、本当に、すまない......」



彼は振り向かず、私に向かって謝ってくる。


彼のした行いはきっと正しいのだろう。一国の騎士団長で、守るべき家族がいて......。


そんな彼が職を失わないよう私のことを報告するのは義務であり、至極真っ当なことだ。


彼は悪くない、世間的にみて悪いのは私だけ。

そんな理不尽な世界こそ、私が日本で幾度と望んでいた"異世界"なのだから。


だか、そんな私にも親切にしてくれた。脱出用の魔石もくれた。

これ以上彼に何を求めようというのか。


振り向かないまま顔を下げているジオに私は......




「ジオ......軍資金と食料と、あと魔石も何個かちょーだい!」



「お、お前......」



一人でどこか遠くの地へ投げ出される前に、これから生きていく上で必要になるだろう最低限の物資を要求する。



理不尽で過酷な異世界で生き抜くには、多少、がめついぐらいが丁度いいのだ。



ジオは私の言動にドン引きしながらも、手持ちにあった軍資金3万ゼニー、干し肉、そして甲冑の所々にあった魔石をとり、3個ほど分けてくれた。


代表作の方の執筆の調子が良くない時に気分転換で書いていく作品になってます!

代表作の方は少し変わったラブコメになっていますので、そちらの方もぜひ読んでみてください!

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