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ズル無しでよろしく、

 すごいものを見ると自分も早くやってみたくなるということがある。そして今、それとはまったく逆のことが僕の頭には起きている。最近はびっくりするくらいすごいものがない。良い程度のものならばいくらでもあふれているけれど、見た瞬間に痙攣が起きるほどすごいものをしばらく摂取していないせいでこんな深夜に、何とか何かしらを書きだそうと奮闘している。おかげで眠くはない。それはこんな身辺の前提から曝け出して書く馬鹿野郎からがスタートだった。

 しかし乗り出した馬はすぐに木馬の音を立てて崩れる。まったく当てなどないことに気が付く。当てがあるのならこんな深夜、熱暴走を起こすはずもなかった。とりあえずラムを飲む。これが悪手かどうかは着手してすぐあいだには分からない。きっとアルコールによってイメージの流動は促されるだろうが、文章構成という点において若干の不利を強いられる。論理自体の美しさに文句はないが、ただそれならばCPUの基礎でも見直していればいずれ夢見心地だろう。そういうことじゃないんだ。何かもっと爆発的な……。

 そうだグレネードだ! グレネードを……、これはどうやって使う石ころなんだ。ムダに部品が多い石ころは嫌いだよ。車だってUNIXだってスモールイズビューティフルというじゃないか。妙に重たいし……これは君に預けておこう。いつか返しに来なさい。

「ありがと! おじちゃん!」

 数本歯の抜けたでかい笑顔がとうもろこしを想起させる。一体あの子供は誰だったんだ。まあグレネードを1つだけ渡すなら知っている子供よりも知らない子供の方がいい。あの子は都合が良かったんだ。子供は丘から丘へ駆けていき、その先に横たわる糸杉の森で火事を起こすに至った。これはのちのち新聞で知ることになる。あのときのことを思い出すと胸が痛む。

 そんなことより僕にとっては小説だった。200%集中していると、小説と他のことに100%ずつ分配できて便利だ。通販サイトの一つのレビューが目に止まる。


★★★★☆ ズル無しでよろしく、

2020年10月31日に日本でレビュー済み

面白く読んでますよ、ただ本の値段が高くボッタクリ!

6人のお客様がこれが役に立ったと考えています


 各所のレビュー欄にはたまに、こういう天才的なカリスマが現れる。そのほとんどは文面からして明らかなおばさんなんだ。おばさんが何歳からなのかはよく分かっていないけれど。それにしても『ズル無しでよろしく、』って何だよ。かっこよすぎるだろ!!

『はー、盛り上がらない夜ね。』

 これも昔見た映画に出てくる、あるおばさんのセリフだ。この人は双子姉妹の母親で、ロシュフォールでガラス張りのカフェを経営していた。あれは楽しい、楽しい映画だった。ああ、答えはおばさんだったんだな。咥えていないタバコを床に落として身が燃え盛る感覚を覚えている。これが酒に酔うということなんだ。

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