3. スキル:眼科医
「おおっ、本当か?すまんのぅ」
神様は大喜びだった。
そして仕事の説明をはじめる。
「お主はお主の思う通りに生活をしてくれればよい。ワシはそのお主を通じて世界の情報を得る」
おお、それは楽でいいな。
「ただ、ワシが信託を下した時はそれに従ってくれ」
急な呼び出しはあり、と。
まあ当然ではあるか。
「よし、では早速力を与えよう。ワシがお主に与えるのは3つじゃ」
「まず一つは若き肉体。何事も体力無くしては成し遂げられんからのぅ。お主なら20歳頃の体がよかろう。ワシの加護もつくから病気にもならんぞ」
おお、それはありがたい。
もしこれから行く世界に歯医者がなかった場合、虫歯になんかなったら悲惨だからね。
実際、江戸時代の徳川将軍家には、虫歯で寿命を縮めた将軍がいたなんて話、聞いたことがあるしなぁ
「次に補助スキル。これは言語や世界の常識をお主に教えたり、生活をサポートしてくれる力じゃ」
「さて、最後の1つとして、固有スキルを与えるのじゃが、これはお主が選ぶことが出来る。どんな力が欲しいかの?」
「うーん、そうですねぇ」
こんな夢みたいな状況、考えたこともないからなぁ。
なろう系の小説ならチート能力の一つや二つ、すぐに浮かぶのだろうけど、こちとら一般人、そん都合よくはいかない。
ああ、でもまずは生きていかなきゃならないから、食うために稼げる技術は必須だよね。
そう考えると
「それでは医師としての能力を身につけることはできますか?できれば眼鏡を自由自在作れる能力を合わせて」
僕は大学卒業後、最初から眼科で働いていたわけではない。最初は大手のスーパーで働いていた。
だが20代後半の頃、ネットが浸透して通販が拡大するにつれ、僕は業界の先行きに不安を感じ始めた。
販売のプロになっても、社会から必要とされなければ職業として成り立たないからだ。
そこで僕が目をつけたのが医療業界だった。
高齢化が進む日本にとり、医療は欠かせない分野だし、中でも眼科は極めて日常に密着している分野だ。
なにしろ、人間が取得する情報の8割が視界と言われるくらいだからね。
流石に大学に入り直して医師になることはできなかったが、検査員として眼科に採用されて、今日に至ったと言うわけだ。
そこで既に15年働いているから経験は充分。
医師ではないから診察や治療はできないが、視力の検査や眼鏡、コンタクトの度数調整といった補助的な業務は何でもこなせる自信があった。
コンタクトは目に入れるものだから、たとえ医師スキルがあっても販売することに不安があるが、眼鏡は老眼鏡ならば100均ですら販売しているものなので、比較的安心して販売出来る、僕はそう考えたんだ。
「ふむ、よかろう。それではお主にスキル「眼科医」
を授けよう。本来は医療全般のスキルなのだが、眼科に特化することで、眼科としての診察はもちろん、お主の望む眼鏡を作り出せるスキルにしておいた。簡単な検査道具も召喚可能じゃ」
僕は経験の豊富なメガネの作成以外はするつもりがなく、あくまで眼科医の知識は万が一の保険として必要なだけだから、十分すぎる高性能スキルだ。
神様がそう言うと、僕の身体がボワーと光った。これがスキルを身につけたと言うことなのだろう。
「それでは頼むぞ」
そう言うと神様の姿が霞始めた・・。
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