2. 僕が神族の血を引く理由
唖然としている僕に神様は説明をしてくれる。
「この地方には天女が降りてきて帰れなくなり、この地で男と一緒になったという伝説があるじゃろ」
確かにある。
それはかなり有名な昔話で、日本人なら誰でも一度は聞いたことがある話ではないだろうか?
実際、僕の故郷にはその伝説に登場したとされる松(ただしその3代目)がある。
・・まさか。
「そう、そのまさかじゃ。あれ、実話なんじゃよ。そしてお主はその子孫というわけじゃ」
神様の言葉じゃなければ笑い飛ばすような、衝撃の事実だった。
しかし、同時に疑問が湧く。
「うーん、でも僕は・・、ああ両親や祖父母も全然普通の人間でしたよ」
僕の疑問に対し、神様は答える。
「うむ、その通りじゃ。神族というのは元々特殊な力を持っているわけではないからの。基本的には人族に近い。神族が特殊なのは、ワシが直接力を与えることが出来るということじゃ」
ということは、神族の血を引くと言っても、僕は一般の人とほとんど変わらないということか。
うーむ、ホッとしたような残念なような・・。
神様は続ける。
「ワシはいくつかの世界を管理しておるのじゃが、諸事情により直接手を出すことはできん。神族は、いわばそのワシの代行のために、ワシが作り出した存在なんじゃ」
ふむ、すると
「神様 = 神族」
ではなく、神族は万能ではない、ということかな。
「うむ、ワシが神族に与える力はワシの力のほんの一部じゃからな。その理解で概ね正しい」
そこまでいうと神様は一つ先払いをして続ける。
「オホン、さて、お主が理解できたところで本題なんじゃが、お主にはその神族としてワシの手伝いをして欲しいのじゃ」
その神様の依頼に対して僕は疑問をぶつける。
「何故僕なのでしょう?」
「実はな、ワシの管理しておる世界の一つで、派遣した神族が反乱を起こしたのじゃ」
衝撃の事実をさらっという神様。
「幸い、彼奴は封印することに成功したが、その影響でその世界には他の神族も派遣できなくなってしもうた」
そんなことが・・って、もしかして
「そう、その通りじゃ。ワシが直接世界に関われないというのは、ワシの影響力が大きすぎるという問題があるからじゃ。今回はやむを得なかったとはいえ、その結果、全ての神族が活動できなくなってしもうた」
なるほど。強すぎる力も問題になる、か。
「そこでお主ら神族の末裔に目をつけたのじゃ。お主らは神族であって神族ではない、故にその神族の活動が封じられた世界に派遣することもできるし、いくらか制限があるが、ワシの力を与えることも出来る」
ふむ、神様の仕事の手伝いか。面白そうでもあるが・・。
考える僕に、神様は申し訳なさそうに付け加える。
「それにな、こう言うのは申し訳ないのじゃが、家族がいるものを無理やり別世界に送るのは極力避けたいんじゃ」
それはそうだよね。確かに僕なら適任だろう。
納得した僕は笑顔でこう言ったんだ。
「わかりました。僕で良ければお受けします」