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第八話 ラノベ

 そして、ご飯を食べ終わり、俺は秋根の部屋にお邪魔した。昨日は主にリビングで過ごしたこともあり、秋根の部屋には初めて入る。


「……ここが……秋根の部屋か」


 そう呟く。

 部屋は綺麗に飾られていて、THE女子部屋という感じがした。

 正直男の俺に取って軽く緊張する感じの見栄えだった。俺が緊張しているのが秋根にバレたのか「所詮私の部屋だから大丈夫」と言ってくれた。


「さあ、ゆっくりくつろいで」

「おう」


 そして俺は相手いるスペースに腰を下ろして座る。だがなんとなく落ち着かない。

 どうしてもソワソワしてしまうのだ。

 正直言ってこれは男の本能的に仕方がない気がする。異性の部屋を意識せずにいられるようになるにはまだ時間が掛かりそうだ。


 そしてしばらく経った後、秋根が痺れを切らしたように、「何かする?」と言った。無音の空間に耐えきれば買ったのだろう。

 俺的にいえば、お前がこの部屋に呼んだんだろと言いたい。



「これはどう?」


 そう言って秋根は少女漫画を取り出してきた。


「それって少女漫画?」

「そうよ」


 こいつ、ラノベはダメで少女漫画はいいのかよ。俺的に似たようなもんだと思うんだけどなあ。知らんけど。


「読んでみて」

「やだよ」


 絶対に俺に合わない。見た目でそう確信する。


「えー、試しに読んでみてよ。絶対面白いから」

「じゃあ、ラノベも読めよ」

「嫌」

「なんでだよ!?」

「私と遊星くんで少女漫画読もうよ。私ラノベ読みたくないし」


 我儘すぎねえか? 流石に交換条件として成立してねえ。


「じゃあ俺も少女漫画読まない、ラノベ読む」

「むむむ、強情だね」

「当たり前だ。俺の交換条件を呑め」

「いやでも、取りに行くの面倒臭いよね」

「あー、もう! じゃあ持ってくる!」


 そう言って俺は部屋を飛び出した。このままでは本当に埒が開かなすぎる。こういうのはもう、話し合いではなく、強引に解決すればいいのだ。


 そして俺の新部屋に来て、ラノベを数冊選ぶ。まず女子相手に読ませるとしたら、過激なシーンはダメ。そしてタイトルがラノベ感満載のやつも出来ればやめた方がいい。そして、少女漫画に対抗するには恋愛系のやつの方がいい。

 よし! と、条件に合いそうなラノベを三冊選んで持っていく。


「お待たせ」

「お待たせって何? こっちは急に出て行かれた感じだから」

「それは悪かった。でも、フェアじゃない気がしてな。ほら」


 三冊のラノベを机に置く。


「あー、なるほど。これを私に読めと」

「ああ、そしたら俺も少女漫画読むから」

「……嫌だ。でも、これは読んで欲しいな」


 少女漫画一冊を出される。


「それだったら俺もこれ読んで欲しい」


 俺もラノベ一冊を出す。


「これは先に折れた方が負けって事?」

「そうなるなあ」

「じゃあさあ、どっちを読むかゲームで決めようよ」


 秋根は、オセロを取り出した。


「なるほど、てことは、お前強いって事だな」

「そうね、私強いわ」


 そしてボードゲームを開始した。


 俺が白で秋根が黒だ。だが、試合が終わるのにそんなに時間はかからなかった。俺があっさりとかったのだ。自信満々に試合に挑んできた割には秋根はかなりの弱さだったのだ。なぜこの実力で俺に試合を挑んできたのかわからないくらいには。


「じゃあ、読んで」

「むむむ、なんかむかつく。だって、こんな萌え絵があるし……それに女性の権利を侵害してるし」

「お前フェミニストだったの?」

「違うけど」


 そう言って、秋根はSNSでこういう投稿みたからと言って笑う。


 確かに、そう言う絵ということは認めるけど。実際、主人公に対してヒロインが、前かがみになりながら話しかけるシーンで、軽く谷間も見えてしまっている。そのことを考えると、秋根がそう言う反応をするのも当たり前だ。


 だが、この本の良さを秋根にも分かってもらいたい。せめて七十ページは読んでほしいものだが。


 そして秋根は早速苦い顔をしながら読み始めた。それに合わせて俺も俺用にと、持ってきていたラノベを読む。


 そしてしばらく読んだ後、秋根をふと見る。すると、かなり熱中しているように見えた。しかもページ数も地味に俺よりも進んでいる気がする。


 俺的には「そんなにはまっているのか?」と言いたいところだが、それで秋根が読む気をなくしたら、それは本末転倒というものだ。話

 しかけたいのを我慢して、秋根の読む姿をじっくり観察しながら、読み進める。俺が呼んでいる作品は完全なるラノベだ。

 作中で、男子高校生と女子中学生が同棲することになって、二人でイチャイチャすると言った、シンプルに、読んでいる男子を楽しませようとする作品だ。

 しかし、俺も結構なスピードで読んでいると思うのに、まさか秋根はその先を行くとは。そして、一時間後、俺が読み終わる前に、秋根はその本を閉じていた。


「いや、面白かったね」

「面白かったのかよ」


 まあ、面白いと思ってそうなのは、読んでいる様子から明らかだったけどな。


「いやー、少女漫画もいいけど、こういうのもいいよね。新たな体験だった。

「そう思ってくれるのならうれしいが」


 しかし、秋根があんな馬鹿にしてたラノベを面白いと言ったんだから、俺も少女漫画ハマったりするのかな……そう思い、そばに転がっていた少女漫画を一冊手に取る。

 先程秋根が面白いと宣伝してた作品だ。


「え、それ読むの?」

「ああ」

「え? やった!」

「いっとくけど、気になったから読むだけだ。別に、ハマるかどうかは分かんないからな」

「分かった!!」


 そして俺はぴらピラト読み進める。そして面白いかどうかだが、それはすぐに分かった。面白くない。それが俺のちょっ直な感想だった。

 正直なんでどきどきしているのか全く分からなかった。そのせいで、全く楽しめなかったのだ。そいういう訳で俺は六〇ページくらい読んで、本を閉じた。


「え!? 最後まで読んでよ」

「無理だ。面白くない」

「え、ちょ、酷いよ。私は遊星くんのラノベを面白く読んだのに」

「それはすまん」

「……それは素直なんだ」


 そして秋根は机に置いてあった二つ目のラノベも取り出し、読み始める。ペース早すぎるだろ。そんな秋根を見ながら俺も、読み進めるのであった。

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