第55話 劇
「どうです? メイドさんに見守られながら食べる気持ちは」
「まあ、素晴らしいな。美女が隣にいる訳だから」
「今日のお兄ちゃん凄いね。でもイチャイチャしすぎじゃない?」
「優子ちゃんはまたイチャイチャ警察じゃん」
そう言って秋根も笑う。
何だか幸せな文化祭だな。そう俺は心から思った。
しかしやはり周りからの視線が痛い。これが秋根メイドとともにご飯を食べている代償なのだろうか。
「そう言えば秋根ちゃん」
優子が言う。
「お兄ちゃんがあの子を見てたよ」
優子の野郎結局言うのかよ。
「浮気?」
じっと見られる。その視線が怖い。
「違う。俺は浮気なんてしない」
そして優子を見る。
「優子、嘘ついたの?」
「勿論」
優子はにやにやとしている。
この小悪魔め。
「でも、この罪悪感いいね」
秋根が唐突にい出す。周りではメイドたちが仕事をしているのに、秋根だけ休んでいるのだ。
そりゃ、罪悪感もわくだろう。
「それで言ったら俺も視線痛いんだけどな」
羨ましいと言った視線がぐさりぐさりと刺さってきている。
この視線はかなりきついものを感じられる。
「いいじゃん。僕のおかげで遊星くんが苦しんでいると知ったら、なんとなくうれしいな」
「俺にはお前が分からない」
てか今日は優子も秋根もテンションいつもよりも高い気しかしない。
俺だけテンション普通だから困る。
「そう言えば秋根は去年の文化祭何してたんだ?」
去年は俺とも出会っていなかったはずだ。
「え、それ聞くなら優勢くんも教えてよ」
「俺のは大したことないぞ」
「私のも大したことないのです」
互いに大したことのないと思ってる一年文化彩か。
「じゃあ」秋根が腕を叩く。
「去年の優子ちゃんの話が訊きたいのです」
「私!?」
優子は口を手で抑える。
まさか矛先が自分の向くとは思っていなくて困っているといった状況だろう。
いつも優子が俺を困らせる方だ。
いい気味だと思う。
「それ良いな」
俺も同意をする。
「仕方ないわね」
優子は軽くせき込みして、「分かった」と言った。
「その代わりお兄ちゃんも、秋根ちゃんも一手よね」
「分かってる」
「うん、勿論」
2人の了承が取れたのが嬉しかったのか、優子は楽しそうに話し出す。
「私の去年の文化祭。お兄ちゃんも来てなかったよね」
「俺もその時にはすでに一人暮らし始めてたわけだからな」
それに学校と優子の文化祭が被っていた。
今日優子は学校休んで文化祭に来ているらしかったが、そうしないと他校の文化祭なんていけないのだ。
「私の文化祭はね、朱音ちゃんと一緒に回ってたの。そこで私たちは劇以外にもいろいろ見たけど、一番思い出に残っているのは結局二人ともつかれて、カフェ的な場所でっこう休憩しちゃったこと」
そして俺たちの文化祭の話は熱を帯び、三十分くらい喋りっぱなしだった。
そして俺たちは話し終え、店を出た。
「楽しかったねお兄ちゃん」
「ああ、そうだな」
こいつ、何か考えてそうだな。
「ねえ、お兄ちゃん。結構興奮してたね」
「あ、ああ」
やべ、優子のうざいところが出ている。
「お兄ちゃん」
「もうやめろ。メイドは仕方ないだろ」
「図星なんだね」
「これ以上俺を煽るのはやめろ」
そして、俺たちは一時まで適当に時間をつぶす。
その理由は主に秋根が戻ってくるのを待つためだ。
一時から劇がある。それが俺と秋根が見に行こうと言っていたものだ。
秋根が終わった後、劇場で待ち合わせをする予定なのだ。
俺たちがその場に行くと、そこにすでに秋根がいた。
メイド服のままで周りからの注目を集めてる。
「ねえ、お兄ちゃん。秋根ちゃんがメイド服でうれしい?」
「嬉しいに決まってるだろ」
「私も嬉しいけどね。秋根ちゃん可愛いし」
「ありがとうなのです」
そして俺たちは席に着き、そして劇の会場を待つ。
劇の内容は確か、人魚姫のはずだ。
「私、楽しみなのです。どんな劇をしてくれるのか」
「ああ、俺もだ」
楽しみで仕方がない。
そして劇が始まった。
早速人魚役の人が地上に焦がれるシーンから始まる。
俺たちがよく知っているのはリトルマーメイドだが、それをベースにしているわけではないのか。
しかしあのアニメ映画は歌入りとは言え時間が長い。
それに全部の時間を使えないという事か。
十五分しかないみたいだし。
隣の秋根を見る。真剣に見ているなと思った。
その秋根の顔を見ると少しドキドキする。
劇はものすごいスピードで進んでいく。しかし各々中々演技力がある。
没入感を持てるのだ。
秋根ってそう言えば劇とか出来るのだろうか、とふと思った。
そう言えば撃を見たいと言ったのは秋根だ。
秋根は劇に対する感情とかあるのだろうかという事だ。
後で秋根になんで劇を見に行きたいと思っていたのかを聞かないとなと思った。
「はあ、面白かったのです」
秋根が上機嫌に言う。
「二人はどうだったのです?」
「ああ、面白かったよ」
俺がそう言うと、優子もうなずいた。
「学生のレベルとは思わなかった」
「そう言えば秋根は何でこの劇が見たかったんだっけ」
「そりゃ見たいからだよ。僕は劇を遊星くんと別れてから結構見てたしね」
そう言って秋根は笑う。
「そうなのか?」
「うん。ディズニーオリジナルの作品は大体見てるし」
「意外だったな」
まさかそんな趣味があったとは。




