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第十二話 秋根の教室

 そして昼休み。いつものように秋根は遊びに来た。とはいっても俺の弁当は今秋根が持っているわけで、秋根が来てくれないと俺は昼ご飯を食べられないわけなのだが。


 そして今日も仁に一言断って秋根のところへと行く。ちなみに仁に「見てる方は恥ずかしいから今日はラブコメはやめろよ」と言われた。

 だから、それは秋根に言えって。


「今日は、私の教室で食べない?」


 ここで食べるものだと思っていたが、秋根の教室で食べるらしい。しかし、


「あいつは大丈夫なのか?」


 勿論厄介オタクのことだ。


「大丈夫。もし、なんか言って来たら殺すから」

「やけに物騒だな」

「私たちの絆は他の誰にも壊させはしないわ」


 そう言った秋根の笑顔はなんとなく怖い感じがした。こうなったら今まで秋根があの厄介オタクにどれだけのことをされてきたのか少し気になってくる。


「さて、行こう」

「ああ」


 そして仁に手を振り、秋根の教室へと向かう。


 そして入ると、いつもと違う雰囲気がする。それは当たり前か、いつもの俺の教室とは違うのだから。

 この教室は第一勘、女子が強い気がする。


 俺の教室では男子が結構会話の中心にいるイメージだからそれとは全くの逆と言えよう。この教室で秋根がどういうふうに過ごしているのか、少しだけ気になってきた。


「なあ、ここに友達とかいるのか?」

「いるよ勿論。でも一人は休んでるんだけどね」

「そうなのか」

「あ、でも。もう一人なら紹介できるよ。ねえ来て! 朱葉(あけは)!」


 そう言って一人の女子が来た。黒髪のショートカットで、活発的な印象を受ける。


「よろしく。君が秋根の彼氏だね」

「はい。高田遊星と言います」

「そっか。よろしく。秋根の相手も大変だと思うけど、頑張って」

「ちょっと、朱葉!!」

「事実だから仕方ないじゃん。あんたの性格だと、毎日イチャイチャしてるんでしょ?」


 事実過ぎる。流石秋根の友達だ、秋根の性格をしっかりとわかっていらっしゃる。


「まあね。昨日もめっちゃイチャイチャしたもん」

「やっぱり」


 そう言って朱葉さんはため息をつく。彼女も秋根には苦労してるんだな。


「じゃ、食べよう」

「ああ」


 そう言って、朱葉さんの顔を見る。


「あ、朱葉の手番は終わったからもう言っていいよ」

「やっぱり、私への扱い雑よね」


 そう言ってため息交じりに帰って行った。

 確かに扱い雑過ぎる。


「じゃあ、食べよう」

「……いいのか、友達は」

「大丈夫。慣れっこだと思うし」


 やはりいつもの光景なのか。流石秋根、わがままが過ぎる。

 そして朱葉さんに申し訳ないと思いながら、秋根とご飯を食べる。


「ジャーン。今日は焼きそば作ってみました!」

「おお、焼きそばか」


 しかも俺が好きな方(塩焼きそば)だ。


「遊星くん、好きだったでしょ」

「昨日に続いてよく覚えてるな」

「私記憶力だけはいいもん」

「遊星くん離れないでって子供の時に言ってたことを忘れてたけどな」

「それは別よ」

「本当にか?」

「だって私テストの点最高点九七点だよ。世界史」

「なるほど、それはすごいな」


 だって、俺の暗記科目系の最高点七二点だし。


「普通に尊敬ものだ」

「でしょ! 尊敬して!」

「……なんか尊敬したくなくなったな」

「尊敬してよ!!!」

「そんな怒鳴られても……」


 俺に非がない気がする。

 そしてそのまま今日も問答無用であーんされる。焼きそばのあーんはあまり聞かないぞ。


「そう言えばさ、ラノベっぽいこと言ってもいい?」

「……どうぞ」

「私は楽しいからやってるだけ。別に遊星くんのためにやってるわけじゃないんだからね」

「……それツンデレになってないだろ。お前が楽しいってことをばれたらいけないんだから……。てかそもそもお前は楽しくてやってるだろ。あーんは」

「まあ楽しくてやってることは否定しないよ。だってイチャイチャは正義なんだもん」

「何がお前をそうさせたんだよ」

「え? ラノベ」

「その前」

「それは分かんない」

「分かんないのかよ」

「でも私はイチャイチャできるだけで幸せだから」


 ったく、そんな幸せそうな顔でそんなこと言われたら何も言えねえよ。


「てかさ、放課後どこか寄らない?」

「放課後?」

「うん。昨日はどこも寄ってないから。私の提案としてはゲームセンターとかどうかなって思うんだけど。どう?」

「いいな」

「じゃあ、そういう事で。今日も校門前集合ね」

「分かった」


 そして昼休みの時間が間もなく終わろうとしていたので、教室を出ようとした。まさにその時、


「おい! 秋根ちゃんをお前とばっかりイチャイチャさせないぞ!」


 そう言って厄介オタクが出てきた。


「秋根、あれは放っておいていいんだよな?」

「ええ、もちろん。私が後でしばいておくから、黙って帰って」

「だめだ。僕は君を生きて返さないぞ」

「こんなん言われてるけど」

「どうせそいつには何もできないでしょ。これ以上問題を起こしたら退学の恐れもあるし」

「ってことは今までも問題起こしてるってこと?」

「うん。何回も起こしてる。停学処分になること四回で次なったら退学なの」

「へー」


 思ったよりも問題起こしてやがるな。こいつ。


「別に私はこいつが退学になっても困らないけど、遊星くんをいじめたらただではおかないからね」


 そう言う秋根の目はにらみつけるような、恐ろしい目をしていた。秋根自体来夏ちゃんたちにいじめられたことがあるのだ。いじめられる辛さは秋根がよくわかっているだからこそ、俺がいじめられないよう、面倒ことに巻き込まないよう、厄介オタクをけん制しているのだろう。


「分かった? 秋塚慎吾」

「秋根さんにフルネーム呼ばれた、最高!」


 厄介オタクはそう言って、どこかへ行ってしまった。


「お前も、大変だったら言うんだぞ」

「分かってるよ。今までも何かあるたびに文句言ってるんだから」

「先生に?」

「うん。もちろん。私は五年前みたいな弱い女じゃないから」

「じゃあ、良かった。てか、そろそろ行かないとな。また放課後に」

「うんまた放課後に」


 そう言いあって俺は元の教室に戻った。仁に「変なラブコメはしてないか?」と訊かれたもんで、先ほどの厄介オタクとのことを話してやったら笑ってた。まったく。

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