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勇者暗殺計画

 翌日、キャリスタは里帰りするという口実で、城に休暇願いを出し、変装して水面下で動いた。


 王都は高い防御壁に囲われているため、出入り口が限られていて、見張りがしやすい。見張り小屋には、見張り兵が駐在している。


 魔族の襲撃を受けることはなくなったが、腹を空かせた魔物群が突撃してくることは今もたまにある。それに対処するための見張りだ。


 その見張り兵の小隊長に賄賂を渡し、それらしい冒険者を発見したら、いち早く知らせが来るように手配した。

 そうすればいち早く勇者に接触して、上手くだまくらかしてどこかへ連れこんで、勇者の名乗りを上げる前にその口を封じてしまえば良い。


 というのが、ソニアの考えた『勇者暗殺計画』だった。


「でっ、でも実際、誰が勇者様を手にかけるのですか」


 恐れをなしたキャリスタが問うと、


「お金さえ払えば、どんな生臭いことも汚いことも好んで請け負う輩がいるのよ。そっちの道に通じている者を知っているから、口利きしてもらうわ。もちろん、何に使うかはナイショで」


「でっでも、勇者様は魔王を倒した、人類最強ですよ。そんな簡単にやれますか」


「もちろん真っ向から殺らないわよ。油断させて、そうねぇ、酒に睡眠薬でも混ぜて飲ませて、寝首をかくってのはどう? やらせる奴らには、偽者の勇者だとでも言えばいいわ。勇者の名を語る、不届き者への天罰よ」


 実際この三年間に、勇者だと名乗る者が八名、国王を訪ねてきた。

 見るからに別人の者もいたが、念のため全員を『照合』したが、全員偽者だった。


 アルケハイム国の国王が正式に任命した『魔王討伐隊』である印を、勇者一行は左腕に授けられている。

 アルケハイムの王族の印を持つ者が『照合』の呪文を唱えたときのみ、その印は皮膚に浮かび上がる。


 そのことを知らなかった偽者たちは、国王と全ての国民を騙そうとした罪で斬首された。

 そのことが広く知れ渡ってからは、勇者を語る偽者もめっきり現れなくなった。


「まあ、誰も来ないでしょうけど。本物も魔王と相討ちしたか、どこかで野垂れ死んでるでしょうし。一応、念のための対策よ」


 ソニアは、せせら笑った。


 その頃、マージェリーはラバトア国との貿易が再開して初めての貨物船を迎えるにあたり、歓迎会の準備に勤しんでいた。


 最初はただ単に港の視察へ行く予定だったが、それを知った港側がマージェリーを歓迎する会を開くというので、


「それなら私ではなく、ラバトアから来る船員たちを大歓迎しましょう」と提案したところ、皆が賛成した。


「船員たちの歓迎会ですか、いいですね!」

「どちみち船はニ、三日停泊して、こっちで食事調達するわけですしね」

「歓迎パーティーなんてされたら、向こうさんは恐縮するんじゃ」

「そんなにかしこまった、大がかりなパーティーじゃなくて、食事会程度の感じがいいわね」

「気を使わせないように、前もっての連絡もいりませんか?」

「そうね、そのほうがいいわ。時間も、あまり長く拘束しないように気をつけましょう」


 会議は盛り上がった。視察団のメンバーに、港のあるリリローズ地方からやってきた責任者も加わり、盛んな意見交換がなされた。


 これまでマージェリー姫とイシュメルと話す機会のなかった者は、二人へ抱いていたイメージの間違いを知った。

 ツンとしていて冷たく、失言を許さぬ潔癖さと厳しさがある。と勝手に思っていたが、実際はずっと話しやすく、サバサバしているが優しかった。

 にこりともしないが、下の者の些細な意見にも真剣に耳を傾け、公平に判断を下す。

 二人に認められたくて、皆がどんどん積極的に発言しているのが分かった。


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