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精霊魔術学院の妖精使い  作者: 神凪儀


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第三部 三章帝国騎士との模擬戦、その実力差(VII)

「ただいま、ツィエラ」

「あら、おかえりなさい、ハヤト」


 俺は自室に戻り、テーブル席に座って窓から景色を眺めているツィエラのもとへ行く。

「窓から見える景色はどうだ?」

「悪くはないわね。それで、今日はこんな時間にどうしたの?」

「リアナの姉と少し紅茶を飲んでたんだ。そこでリアナの学院事情を色々聞かれた」

「あの子、愛されてるわね」

「そうだな」


 そう言いながら俺もツィエラの対面のテーブル席に座る。今日は座ってばっかりな気がするな。

「今日はミルティアーナは一緒じゃないの?」

「ああ、たまにはこういう日があってもいいだろ」

「そう、じゃあここからは私がハヤトを独り占めできるのね」


 そう言いながらツィエラが微笑む。こっちに来てからのツィエラはどことなく暇そうに見える。やはり学院と比べて行動が制限されるのは辛いだろうか。


「なあ、ツィエラ」

「なに?」

「こっちに来てからはやっぱり退屈か?」

「そうね、学院にいる時と比べると退屈ね。料理もできないし、ハヤトと街を歩くこともできないし」

「いっそのことツィエラをローゼンハイツ家に紹介するか? そしたら行動範囲はずっと広くなる」


 そもそも、学院では俺の契約精霊は最高位の人型であるとばれているのだ。いまさら隠す必要性はあまり感じない。ローゼンハイツ家の人間も悪人ではなさそうだしツィエラを奪われるなんてことはないだろう。


 だったら、ツィエラをローゼンハイツ家に紹介でもして行動範囲を広げたほうがツィエラのためになるんじゃないか?

「それは駄目よ。最高位の精霊、私は妖精だけど、人型はあまり人間界にはいないから、どんなにいい人でも奪おうと考える人間は出てくるわ。ハヤトが私のことを考えてくれるのは嬉しいけれど、今の状態を保ちましょう? それが安全だもの。それに夏季休暇の間だけでしょ? 学院に帰ったらまたずっと一緒なんだからハヤトは私のことは気にせず遊んできなさい」

「遊んできなさいって言われてもなあ、もう見るところも見たし後は鍛錬するくらいしかないんだよ」

「あら、リアナっていう遊び相手がいるじゃない。今なら昨日のことでからかい放題よ?」

「ツィエラは鬼だな」

「ふふ、私は妖精よ」


 しかしそのリアナを犠牲にして俺はシルフィアとの茶会を抜け出している。だからリアナで遊ぶのも難しい。かといってミルティアーナのもとに行くのもいつも通りで味気ない。


 さて、いつもと違う環境に来ても同じメンツというのもつまらないから、もう少し捻った行動をしたいものだが、どうしたものか……。


 俺がツィエラの顔を見ながら悩んでいると、不意に部屋の扉がノックされた。

「ハヤト、いるかしら?」

 リアナだった。もうシルフィアから逃げ出してきたのか?


 俺は扉を開けてリアナを部屋に入れる。

「どうしたんだ?」

「姉さまともう一度模擬戦をお願いしてみたわ。それで了承してもらったからハヤトにも見てもらおうと思って」

「さっきの茶会の場でよく頼めたな」

「そうよ、話を逸らすの大変だったんだから。ほんと、嫌な置き土産をしてくれたわね。それで、今から模擬戦するから見てて欲しいの」

「分かった」

 ツィエラに剣に戻ってもらい、帯剣して鍛錬場に向かうために部屋を出る。


 鍛錬場に着くと、既にシルフィアは装備を整えて静かに立っていた。そして少し離れたところにミルティアーナもいる。

「姉さま、この数日で成長したあたしの姿、見せてあげるわ!」

「ああ、どの程度成長したのか見せてもらおう」


 そう言ってシルフィアは霊装顕現を召喚する。ローゼンハイツ家というだけあってやはり中距離型の鞭だった。

 それに対して、リアナも霊装顕現を召喚し、スネークソードを右手に持つ。

「ほう? この数日で霊装顕現ができるようになったのか。余程努力したのだろうな」

「ええ、霊装顕現できるようになるまでに努力もしたし、霊装顕現できるようになってからも努力してるわ。姉さまと模擬戦するのも努力の一環よ」

「なるほどな、いつでも来い」


 シルフィアの言葉で模擬戦が始まる。

「「猛き炎よ、今ここに形となりて我が敵を焼き尽くせ! 火焔球!」」

 二人の火焔球がぶつかりあって相殺され爆発を起こす。爆発の煙が晴れるとリアナがシルフィアに接近していて、中距離からスネークソードで攻撃する。

「今日は姉さまに一撃入れてみせるわ!」


 そう言ってスネークソードを伸ばして鞭のようにしならせながらシルフィアに斬りかかり、シルフィアは鞭で迎撃する。


 リアナにとって中距離型の武器を持つ相手と戦うのはこれが初めてだ。どこまで善戦できるか分からないが接近戦まで持ち込んで頑張って欲しいところだな。

「やはりリアナも中距離型の霊装顕現になったか、ローゼンハイツの血は争えんな」

「でもあたしには接近戦ができるっていう強みもあるわ、近づいてしまえば勝機はある!」


 リアナはスネークソードを伸ばしたまま鞭のように振るい、シルフィアの鞭を迎撃しながら少しずつ前進していく。


 思っていたよりリアナが善戦しているな……。本当だったらもう少し苦戦すると思っていたのだが。霊威の制御も上手くできている。身体強化に回す霊威も綺麗に流れている。既に経験さえ積めば何処にでもだせる精霊使いになっているといってもいい。下手な帝国騎士よりもリアナの方が強いのだろうと思えるだけの地力が今のリアナにはある。


 一歩、また一歩。リアナが距離を詰めていく。シルフィアは涼しい顔をしているが、内心焦り始める頃合いだろう。


 リアナがある程度シルフィアに接近し、あと少しでリアナの剣の間合いに入るその瞬間、

「紅蓮の劫火、原初にして終焉をもたらす因果の焔、時は来たれり、豪炎をもってこの世全ての生を無に帰せ、大嵐炎舞!」

 シルフィアが大乱炎舞を詠唱して燃え盛る火炎でリアナを呑み込もうとする。



 それを見てリアナは接近を断念して後退、シルフィアの大乱炎舞をやり過ごす。

「見事だ、リアナ。前回戦ってからまだ三週間程度しか経っていないというのに、ここまで変わるのか」

「あたしにはとんでもなく強い仲間がいるの、そいつらに毎日しごかれてるから強くなる速度も尋常じゃないのよ」


 そんなやりとりを交わすだけの余裕ができるようになったのか、リアナの精神面も安定している。近づきさえすれば勝ち目は本当にありそうだ。

 そしてシルフィアはそのまま大乱炎舞の炎をリアナに向けて放つ。


 炎が大蛇のようにうねりながら迫るなか、リアナも大乱炎舞を詠唱して迎撃する。

 やっぱり同じ家の人間が戦うと戦い方も似てくるな。今後のことも考えるとリアナには他の中距離型の霊装顕現を使う精霊使いとも戦わせてやりたいところだが、それは学院に帰ってから、というより今いる学院生に期待しておくことにしよう。


 炎と炎がぶつかり合い、鍛錬場の温度がどんどん上がっていく。二人とも霊威の残量は大丈夫なのか?


 リアナとはそれなりに長い間一緒にいるからおおよその霊威の量は把握できているが、あいつ、こんなに霊威を使うと後が苦しくなるぞ?

「どうしたリアナ。攻めてこないのか?」

「それができたら苦労しないわよ、姉さま」

「霊装顕現に大乱炎舞、一年の前期でここまでできるのは見事としか言いようがない。これに限っては私にもできなかったことだ。素直に賞賛しよう。だが、どちらもまだまだ練度が足りんな。それでは私には勝てないぞ」


 そう言ってシルフィアの大乱炎舞がリアナの炎を押し込み始める。少しずつではあるがリアナが劣勢になり始めた。

 リアナもそれが分かっているらしく、打開策を考えているようだ。しかし、そう簡単には見つからないだろう。今のリアナではまだシルフィアに勝つのは無理だったか……。


 すると、リアナは大乱炎舞の炎を炎で受け流しつつ、前進するための道を作り全速力で走り始めた。大乱炎舞のぶつかり合いが不利なら受け流して道を作る。そしてその道を進んで接近戦に持ち込む作戦か。苦し紛れではあるが今のリアナにとっては最善策であり、それ以外に取れる策がないのだろう。

 リアナは身体強化に霊威を回して速度をどんどん上げてシルフィアに接近していく。


 そしてシルフィアは大乱炎舞の炎が死角となってリアナの接近に気付けていない。これは本当に勝機が見えてきたか?

 そしてリアナが大乱炎舞の炎から飛び出してシルフィアの正面に出る。

「なにっ⁉」


 シルフィアが愕然とし、リアナが額に汗を滲ませながらしてやったという顔をしている。

「これで接近戦に持ち込めるわ、姉さま!」

 そう言ってリアナがスネークソードを伸ばさずに剣として振るう。


 しかし腐ってもシルフィアは帝国騎士。そう簡単に剣に斬られるわけがなく、初撃は躱される。リアナもそれは想定していたらしく、そのまま連続で斬りかかっている。しかし、シルフィアも接近戦なのに鞭を器用に使ってリアナの剣を凌いでいる。


 だが、遠くから見ていると追い詰めているのはリアナのはずなのに、リアナは苦しそうな、焦った顔をしていて、シルフィアは真剣ではあるが焦っていない。


 おそらくシルフィアはこのまま耐えてリアナの霊威が底を尽きるのを待っているのだろう。リアナが大乱炎舞の炎のすぐ側を通ってこれたのは、霊威を全力で身体強化に回していたからであって、それは霊威の消耗を激しくする行為でもある。おそらくリアナにとっては起死回生の行動であり、シルフィアにとっては考えられる可能性の一つでしかなかったのだろう。それでも本当にやるとは思っていなかったのか、実際にリアナが炎の中から飛び出してきた時は驚いていたが。


 そして勝負の決着がつく。

 最後はあっさりとしていて、リアナの霊威が尽きて戦闘不能になったのだった。


「途中の大乱炎舞の炎を突っ切ってきたのは見事だった。だが、霊威の残量を考えるならもっと早くからそうするべきだったな」

「はぁ、はぁ、はぁ……そうね、途中で打開策を考えていた時間が無駄だったわ。というか姉さま、接近戦も全然強いじゃない」

「当り前だ。私はこれでも帝国騎士だぞ? 自分の弱点くらい補えるように訓練している」

「姉さまとならいい勝負ができるかもって思ってたのに全然ダメだったわ……」

「私となら?」

「ハヤトとミルティアーナは強すぎて話にならないのよ。だから姉さまとならもう少しいい勝負ができると思ったんだけど」

「……ほう?」


 ローゼンハイツ姉妹がそんな会話をしていると、何故か目線がこちらに向く。

 というかリアナ、俺たちのことは話さなくていいのになんで話すんだ……。

「ハヤト」


 シルフィアが近寄ってきて声を掛けてくる。

「なんですか」

「君も一戦どうだ? リアナでは相手にならなくてな。それに、帝国騎士より強いと言わせるその実力を見てみたい」

「ハヤト君、久々の帝国騎士との戦いだね」


 ミルティアーナが小声でささやいてくる。

「久々とか言うな。ばれたらどうする?」

「その時はその時だよ」


 ミルティアーナは俺の素性がばれてもいいと考えている節がある。その方が変に人が寄り付かないからミルティアーナとしては好都合なのだろう。

「それで、ハヤト。一戦交えようじゃないか。何、霊威はまだまだ余っているから問題ないさ」

 これは……逃げられそうにないな。

「それじゃあ、一戦だけ」


 そうして、俺はシルフィアと模擬戦をすることになった。


感想、頂けると嬉しいです。

初心者だからこそ自分で気付ける点と気付けない点がありますのでよかったらコメントを残していってください。

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