第三部 三章帝国騎士との模擬戦、その実力差(IV)
「そもそもリアナはハヤトとキスをして、胸も揉まれてるんだし、学院長から女房って言われてるんだから今更ハヤトへの好意を隠す必要はないと思うけど?」
ここでツィエラがリアナ攻めに加わる。
「胸揉まれたというか上半身裸をがっつりと一昨日見られたよね!」
そしてミルティアーナがリアナに事実を突きつけていく。
「あ、あれは事故よ! 事故だったの!」
「そうね、あれは事故だったわ。でもね、リアナ。本当はどうだったの? ハヤトに見られるのなら悪くないと思ってたんじゃないの?」
「おおお思ってないわよっ! あたしはそこまで痴女じゃない!」
「多少は痴女なんだ?」
「多少も痴女じゃないわよ!」
「そうね、リアナはむっつリアナだものね」
「むっつリアナ言うなっ!」
女子が三人で姦しく話ているが、俺は非常に居心地が悪い。しかもツィエラが少しずつリアナのネグリジェのすそを捲っていっているから脚が少しずつ見えてきている。
これはツィエラがわざとやっているらしく、俺にウインクを向けてくる。
(そこで立ってるだけってのもつまらないでしょ? ちょっとはいいもの見せてあげ
るわ)
(いいものってリアナの脚じゃないか)
(このままだとリアナの下着まで見えそうね?)
(いじめるのはほどほどにしてやれよ?)
そんな調子でリアナへの質問攻めが続いていく。
「でもリアナってハヤト君にキスされて、胸揉まれて、膝枕して、上半身裸見られて、って出来事を並べていくと本当だったらハヤト君に責任取ってもらわないといけないくらいの事態になってない?」
「そうよっ、本当だったら責任取らせるか不敬罪で処するかの二択になるくらいになってるわよ! でもそいつは孤児だから責任を取らせることなんてできないし、帝国に守られてるからあたしじゃ何もできないのよ!」
「責任取れるなら取って欲しい?」
「そ、それは……」
「正直に言わないとネグリジェ捲り上げていくから」
そう言ってツィエラがゆっくりとネグリジェを捲り上げている。既に膝が見えてしまっている。
「ちょっ、ネグリジェ捲り上げたら、その、見えちゃう……」
「別にいいでしょ? 水着も下着もたいして変わらないわ」
「変わるわよ! 水着は良いけど下着は駄目なの! だからツィエラ、その手を止めなさい」
「止めて欲しいならミルティアーナの質問に正直に答えないとね」
ツィエラが楽しそうに笑う。
この二人、心の底から今の状況を楽しんでいるな。
「は、ハヤト! 助けて!」
「すまん、この二人が相手だと分が悪い」
「そんな、何もせずに諦めないでよ!」
「それに俺がこの状況で損をすることって何もないから止める理由がないんだ」
「あ、アンタまで……」
リアナがついに涙目になってしまう。
「それで、責任取れるならハヤト君に責任取って欲しい?」
「そ、そんな仮定の話をしても意味はないわ……っ!」
「仮定の話だから夢があるんだよ。それか質問変えようか?」
「……質問を変える?」
「ハヤト君のこと、好き?」
……ミルティアーナ、それは本人のいる前で聞く質問じゃない。俺まで気まずくなってきた。
「俺、ちょっと外の空気吸ってくる」
「ハヤト君、そこから動いちゃ駄目だからね?」
リアナに気遣って外に出ようとしたが、ミルティアーナに動くなと言われてしまった。しかも顔を本気だ。
「それでリアナ、ハヤト君のこと、好き?」
「そ、れは……」
リアナは答えに困っているらしい。いつもみたいに好きなわけないとか言えばいいのに。
そうやって解答を渋っている間にもツィエラにネグリジェのすそを捲られている。もう白くて眩しいリアナの太ももが露わになっている。
「ハヤト君のこと、好きかな?」
ミルティアーナがニヤニヤしながら再三問う。
それからしばらく、沈黙が部屋を支配した。壁に掛けられた時計の秒針の動く音だけがやけに大きく響き、ツィエラも、ミルティアーナも動きを止め、リアナを見ている。
そしてリアナは、今でもこの状況を打破する方法を探しているのか、目を動かして必死になっている。そして俺と目が合う。
「あ……」
目が合った途端、リアナの顔が赤くなる。それも急激に、リアナの綺麗な髪と同じくらい赤くなっていく。それと同時にリアナの目に涙が溜まっていく。流石に羞恥心が限界を超えたのだろう。
俺はこれ以上は可哀そうだからと、ツィエラとミルティアーナを止めようとすると、
「……好きで、悪い?」
「……え?」
俺の聞き間違いだろうか? 最初はそう思った。だが、
「好きになって何が悪いのよ! 命を助けられて、苦手だった霊威の制御を他の人には教えずにあたしだけに付きっ切りで教えてくれて、とんでもなく強くて、それでいて座学が苦手だからってあたしを頼ってくる弱さもあって、一緒に特別依頼をこなして、これからも二人で一緒にやっていこうって話を笑いながらしたのよ⁉ そんなの、好きにならないわけがないじゃない……。本当だったら責任だって取って欲しいわよ! あたしにキスをして、胸を揉んで、膝枕もしたし、上半身裸だって見られた! 今すぐにでもどこかの貴族に引き取られてあたしと婚約して欲しいわよ! でも! あたしは貴族で、ハヤトが嫌う貴族で、あたしの気持ちが報われることなんてないじゃない……っ! だからこの気持ちは隠し通そうって決めてたのに、あたしに暴露させてアンタたちは何がしたいのよ! あたしとハヤトじゃ、結ばれるこはないのよ? なのにこんな事言わせるなんて、あたしが惨めじゃない……」
ミルティアーナの刻印魔術の効果が切れたらしい。リアナはひとしきり叫ぶと、両腕で顔を覆って泣き始めた。
「ミルティアーナが編入してこなかったら、ずっとあたしがハヤトの隣に入れたのに、アンタが来てからあたしとハヤトの二人っきりの時間が減ってどれだけ辛かったか分かるっ⁉ 特別依頼で、ハヤトとミルティアーナだけが強いからってあたしが置いて行かれた時の気持ちが分かるっ⁉ あたしはミルティアーナに嫉妬したわ。どうしてあたしじゃなくてミルティアーナがハヤトの隣にいるんだろうって。あたしは……こんな気持ちになるくらいなら、貴族になんて生まれなくて良かったわ……。裕福でなくていい、貧乏でもいい、だからあたしもハヤトと同じ孤児院で育って、ハヤトと一緒に旅をして、幸せな人生を送りたかったわよ。こんな気持ちを知ってから、後から知らない男と結婚させられるあたしの気持ちがアンタたちに分かるっ⁉ どれだけ焦がれようが、どれだけ切望しようが、あたしはハヤトとは一緒になれない……どこの知れない男と結婚して、どうでもいい男の子供を産まないといけないのよ!」
それは、リアナの心からの叫びだったのだろう。俺たちはリアナの叫びに対して、何一つ言葉を返すことができなかった。
俺の部屋に、小さなリアナの泣き声が響く。
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