第三部 三章帝国騎士との模擬戦、その実力差(III)
「ハヤト、今日も昼寝してるの?」
今日もリアナが迎えに来たらしい。メイドに任せればいいのに世話焼きだな。それともツィエラが露見することを気にしてくれているのだろうか?
「いや、今日は起きてる」
「夕食ができたから食堂に行きましょ?」
扉越しにそう言われ、俺はツィエラの肩から手を離し、
「それじゃあちょっと行ってくる」
「ええ、いってらっしゃい」
短いやりとりを交わして部屋を出てリアナと合流する。
「待たせて悪い」
「別にたいして待ってないわよ、今日は起きてたし。それじゃ、行きましょ?」
「ああ」
今度はリアナと肩を並べて食堂に向かう。
そして食堂への道を進む途中、
「ねえハヤト」
「なんだ?」
「ハヤトは本当に帝国騎士団じゃなくて諜報部隊に入るの?」
「そうだな、俺はどちらかというとそっちのほうが向いてるからな」
「……そう」
リアナが残念そうな、そして悲しそうな顔をする。別に入る場所が違っても縁が切れるわけじゃないのに、こういうところは繊細なんだよな、コイツ。
そして食堂に到着し、今日もローゼンハイツ家と共に夕食を食べる。
そして今日もリアナの姉、シルフィアに俺は見つめられながら夕食を食べるのだった。
夕食後、俺は自室でツィエラと談笑していると、不意に部屋の扉がノックされた。
「ハヤト君、はいっていいかな?」
「ああ、いいぞ」
俺は扉を開けてミルティアーナを迎え入れる。が、何故かミルティアーナのとなりにリアナもいた。
しかも二人とも寝間着姿だ。ミルティアーナはいつも見慣れている寝間着だが、リアナはネグリジェというやつだろうか、随分と豪奢で柔らかそうな生地の服を纏っていた。
「二人そろって俺の所にくるって珍しいな、どうしたんだ?」
「夏といえば、やっぱりパジャマパーティーだよね!」
なるほど、ミルティアーナの思いつきでこうなったらしい。わざわざリアナまで巻き込んだのか……。
「なるほどな。それで、リアナのその姿は俺に見せてしまって大丈夫なのか? 後から俺が怒られるのは嫌なんだが?」
「あたしが自分の意思で来てるんだから問題ないわよ」
「そうか」
「だったら私も寝間着になった方がいいかしら?」
ツィエラがそんなことを言い始める。
「ツィエラの寝間着って下着姿じゃない! 駄目に決まってるでしょ!」
リアナが全力で止めに掛かる。
「しかしティアーナ、どうして急にパジャマパーティーなんて考えたんだ?」
「だってせっかくの夏季休暇なのに思い出が少ないんだもん」
「街に行って海にも行ったじゃないか」
「逆に言うとそれだけでしょ? もっと思い出欲しいと思わない?」
ミルティアーナは夏季休暇を堪能しきれていなかったらしい。だからって男を交えてパジャマパーティーはどうなんだ……?
「それで、パジャマパーティ―って何をするんだ?」
そう、俺はパジャマパーティ―とやらを知らない。何故なら今までそんな機会がなかったからだ。むしろミルティアーナはどうしてそんなことを知っているんだ?
「それはね、恋バナしたりとか……、えっと、本当に何するんだろうね?」
ミルティアーナも詳しくは知らなかったらしい。よくそんな状態でパジャマパーティーとか言い出したな。
「でも恋バナだったらうってつけの人物がいるから時間が過ぎるのはあっという間だよ!」
「うってつけの人物? それって誰のことよ、ミルティアーナ」
「そんなのリアナに決まってるじゃん」
ミルティアーナが当たり前のように言う。確かに恋に関する話なら俺やミルティアーナではできないからな。かといって貴族のリアナにもできるかは分からないが、俺たちより恋愛ができる環境だったのだから何かしらの経験はあるだろう。
「えっ⁉ あたし⁉」
「うん、他に誰がいるの? リアナは現在進行形で恋愛してるから楽しい話が聞けると思うんだ」
「ちょっ、嫌に決まってるでしょ! あたしは話さないわよ?」
「ふっ、ふっ、ふっ、そう言うと思って短剣持ってきてるよ、リアナを痺れさせてからゆっくりと吐かせればいいんだから」
思っていたよりミルティアーナは本気でリアナに話させるつもりだったらしい。目が本気だ。そしてこうなった以上もはやリアナは逃げることはできないだろうから、今日はリアナの恋愛暴露トークになりそうだ。
「うそでしょ……?」
そう言いながらリアナはミルティアーナから距離を取ろうとして後ろずさる。
しかしミルティアーナはそれ以上に素早くリアナに詰め寄り、怪しげな動きをしながらリアナを拘束しようとしている。
リアナ、南無。
こうしてリアナはかの暴虐のミルティアーナに短剣の刻印魔術で痺れさせられ、俺の使うベッドに大の字で横たえられる。その左右にミルティアーナとツィエラが座り、俺が正面からその光景を眺める図になった。
「……ねえ、なんでアンタたち二人があたしの左右に座ってるの? しかもその手つきは何?」
「いやぁ、体を動かせない美少女がベッドで倒れていたらいたずらしたくなっちゃうよねえ?」
「そうね、リアナは元々こういう役割なんだからおとなしくいたずらされておきなさい」
「なに⁉ あたしは何をされるの⁉」
女三人寄れば姦しいと言うが、まさにこれをそういうのだろう、と思いながら俺はベッドを眺めている。ミルティアーナに正面から見ているように言われたからだ。
「リアナの着てるネグリジェ綺麗だよね、生地もサラサラしてる」
そう言ってミルティアーナがリアナのお腹を撫でる。
「ひゃっ、ちょっと、ミルティアーナ、どこ触ってるのよ」
「どこってお腹だけど?」
「あら、リアナってば普段あんなに鍛えてるのに脚は柔らかいのね」
今度はツィエラがリアナの脚を触っている。
体が痺れているリアナは抵抗することができず、なすがままになっている。
「ちょっとツィエラ、それくすぐったいわよ! ……ひゃうっ!」
リアナが動けないのをいいことに、ツィエラはそのままリアナの内腿をさすっている。なんか背徳的な空間になってきてないか?
「それじゃあパジャマパーティー、始めようか」
「俺にはリアナを供物にした何かの儀式が始まるようにしか見えないが」
「これがパジャマパーティーだよ、ハヤト君」
そういう、ものなのか……。
「それでリアナ、最近リアナって恋してるよね?」
「な、なんのことかしら?」
「あら、うちのハヤトの事、好きじゃないの?」
「べ、別に好きってわけじゃないわよ」
リアナは挙動不審になりながら答えている。
「でもリアナはハヤト君に膝枕してあげるくらい心を許してるよね?」
「それは、その時々でハヤトが辛そうにしてたから……」
「辛そうにしてたら誰にでも膝枕するの?」
「しないわよ!」
「じゃあどうしてハヤト君には膝枕したの?」
「それは……」
ミルティアーナがじわじわとリアナを質問攻めしていく。そして上手く答えられず解答を濁すリアナ。
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