第三部 二章古都の街並み(VIII)
そして、砂浜に立てたパラソルで日陰を作り、砂浜にシートを敷いて少し休憩する。
俺たちは果実水を飲みながら、のんびりと海を眺めてさざ波の音に耳を傾ける。
「……いいところだね」
「そうでしょ? ローゼンハイツ家自慢のプライベートビーチなんだから」
「ああ、水中も綺麗だった。今後も夏はここで泳ぎたいくらいだ」
俺がそう言うと、リアナが顔を綻ばせ、
「だったら来年の夏季休暇もローゼンハイツ家に来なさいよ、ハヤトとミルティアーナなら歓迎するわよ」
「そうだね、こんなに気持ちいい生活ができるし、リアナに体術も夏季休暇の間に集中して教えることができるし、いいこと尽くめだね!」
「体術は夏季休暇中はほどほどでいいわよ……」
「まあ体術はどの道体が訛らない程度にやるからいいとして、来年もここに来るのはありだな」
俺たちはそんな話をしながら休憩を取り、
「次は何する? もう少しリアナに泳ぎを教える?」
「あたしが泳ぎを教えてもらってばかりじゃアンタたちが楽しめないでしょ?」
「私は結構楽しいよ? 弟の青春を見てるのも悪くないかな」
「俺もリアナに泳ぎを教えるのは構わないぞ? いつ水棲魔獣の依頼を受けるか分からないし、はやく泳げるようにしておきたい」
「いや、もう水棲魔獣の討伐依頼は受けないから。……それよりせっかく屋敷から遊び道具を持って来たんだからこっちも使いましょうよ」
そう言ってリアナはネットとボールを取り出す。このボール、素材はなんだ?
「このボールはね、軽くて水を弾く性質を持った布で作られたものなの。だから海辺とかで遊ぶときは重宝するのよ? アンタたちはビーチバレーって分かるかしら?」
「ああ、やったことはないが知識はあるぞ」
「私もハヤト君と同じ感じかな」
「じゃあせっかくだからビーチバレーしましょうよ」
リアナがポールを設置してネットを張る。砂浜にポールを突き刺すだけだからお手軽で良いな。
しかし、俺たちは三人で海に来ている。二対一でビーチバレーをやるのは流石にしんどそうだが……
なんて思っていると、パラソルの影に置いていたツィエラが実体化して、
「私も混ざれば二対二になるわね」
新しく買った水着を着ながらそう言うのだった。
「……そうね、ここは誰にも見られてないし、ツィエラが実体化していても家にはばれないわ、これで二対二よ、チーム分けはどうする?」
「あら、私がハヤト以外と組むと思うの?」
「あ、お姉ちゃんもハヤト君と組みたいなぁ?」
「……アンタ、モテて良かったわね」
「モテてると言っても両方身内じゃないか」
そんなやりとりがあった後、結局ハヤトとツィエラ、リアナとミルティアーナがチームを組んでビーチバレーをすることになった。
「それじゃああたしたちが先攻よ」
リアナがボールを両手で持って先攻を宣言する。
「それじゃあツィエラ、軽くボコるぞ」
「ええ、格の違いを教えてあげましょう」
俺たちはリアナがサーブの構えをとる。
「それじゃ、行くわよっ!」
こうして俺たちの真夏の昼のビーチバレーが始まった。
「ツィエラ、上げてくれ!」
「任せて!」
ツィエラがトスで上げたボールを俺がリアナとミルティアーナの間を狙ってボールを打ち込む。しかし、
「甘いよハヤト君!」
渾身の一撃はミルティアーナによって阻止されてしまった。
「ミルティアーナ、ナイスパスよ!」
今度はリアナが俺たちの陣地にボールを打ち込む。しかしリアナは非力だからボールもそこまで速度はでない。俺とツィエラは目くばせをしてからツィエラがボールをレシーブし、俺がトスで上げて、今度はツィエラがボールを相手の陣地に打ち込む。
「きゃっ⁉」
が、そのボールはリアナの顔面すれすれを通って陣地に着弾した。
「ちょっとツィエラ! 今あたしの顔狙ったでしょ⁉」
「狙ってないわ、たまたまよ」
ツィエラが綺麗な髪をかきあげながら言う。
「リアナ、取られた点を取り返すよ!」
ミルティアーナはすっかりやる気になって楽しんでいるらしい。ボールを俺たちの陣地に返して再度サーブを拾うための構えをとる。
そのボールをツィエラが受け取り、
「それじゃあこんなサーブはどうかしら?」
そう言ってツィエラがサーブをゆったりとした動きで打ち込む。一見すると何気ないサーブに見えるが、ボールをよく見ると、
「ちょっと! どうやったらボールがそんなふらふらと揺れるのよ、おかしいでしょ!」
ツィエラのサーブに文句を言いながらボールをレシーブしようとリアナだったが、揺れるボールに対処できず空振りしてしまう。
そしてサーブを拾えなかったリアナが、
「ツィエラ! ビーチバレーで精霊魔術を使うのはずるよ!」
「私は精霊魔術なんて使ってないわよ? これは自然現象で起こした揺れよ」
ツィエラがそう言うが、リアナは納得していないらしく、まだがみがみとツィエラに噛みついている。
結果、
「はぁ、判ったわ、じゃあリアナのためにさっきのサーブはもう使わないであげる」
結局ツィエラが折れる形で話が終わった。しかし揺れるサーブ、凄かったな……。
そして再度ツィエラのサーブがリアナたちの陣地に打ち込まれる。
これをミルティアーナが拾い、リアナがトスでボールを上にあげ、再度ミルティアーナが俺たちの陣地に打ち込む。
それを俺がすんでのところで拾い、ツィエラがそのまま速攻を仕掛けてリアナたちの陣地にボールを打ち込む。
途中でトスを挟むと考えていただろうリアナはツィエラの打ち込みに反応できず、そのまま俺たちに得点を許してしまう。
「あら、普通のサーブでも簡単に点が取れてしまうわね?」
ツィエラがリアナを煽る。そしてその煽りにリアナが反応し、
「言ってくれたわねっ⁉ ここから先は一点もあげないから!」
そう言って闘志を燃やしている。
そして、リアナは宣言通り、それ以降俺たちに点を与えまいと獅子奮迅の動きをし、俺のスパイクを飛び込んで拾い、ツィエラの変則的な動きにも全力で対処し、ミルティアーナに攻撃へと繋げていく。
「リアナの動きが急に良くなったな」
「でもこの暑さの中であんな動きをしていたらすぐにばてるでしょう。それに、リアナは気付いていないみたいだけど、もう少ししたらハヤトにはサービスシーンが訪れるわよ?」
「サービスシーン?」
「ええ、だからその瞬間はちゃんと心に焼き付けておくのよ?」
リアナとミルティアーナの猛攻をしのぎながらそんなやりとりをする。
サービスシーンって何のことだ?
そんなことを考えながらリアナのスパイクを阻止するために、リアナの正面に出る。
その瞬間だった。おそらく獅子奮迅の動きをして、砂浜に飛び込んだりしていたから水着のひもが緩んでいたのだろう。
リアナが俺たちの陣地にスパイクを打ち込もうとして飛び上がったその時、ついに水着のひもがほどけてリアナの儚い胸部装甲が剥がれ落ちた。そして真っ白な白磁のような上半身が俺の目の前にさらけ出される。
なるほど、ツィエラが言っていたのはこのことだったのか……。
確かに男としてはこれはサービスシーンになるだろうな。だが、これは俺が指摘していいのか?
それともミルティアーナかツィエラが指摘するのを待った方がいいのか?
俺はそのことに意識を持っていかれてリアナのスパイクを阻止できなかった。
リアナの胸も、一応揺れるんだな……。
そしてその頂点には淡い桃色に色づいている。
「やった! どんなもんよ! あたしだってやればこれくらいできるんだからっ!」
本人はそう言って喜んでいるが、自分の胸部装甲が剥がれ落ちたことには気が付いていないらしい。
どうする、指摘するか? しかし指摘しても待っているのは間違いなく罵倒だ。そして指摘しなくても待っているのは間違いなく罵倒だ。これは……難しい問題だな。
俺がリアナの胸部装甲が剝がれ落ちた部分を眺めていると、
「ハヤト、アンタさっきからそこで固まってるけどどうしたのよ?」
「い、いや、その、だな、リアナ?」
「? 何よ?」
「その……怒るなよ? 水着、剥がれ落ちてるぞ」
「……え?」
その瞬間、リアナは自分の体を確認し、胸を覆っていた布が地面に落ちていることに気付く。
そして、
「え、ちょっ、ハヤト! こっち見ないで!」
そう言ってリアナは顔を真っ赤にしてその場にしゃがみ込み、両手で胸を隠している。
「ね、私の言った通りになったでしょう? ハヤト」
「これがサービスシーンね……確かにサービスではあるのかもな」
俺はリアナに背を向けながらツィエラに答える。
そして後ろではリアナが水着を拾い上げ、ミルティアーナにからかわれながら水着を着ている途中らしい。
そして胸部装甲の装着が完了するやいなや、
「それで、サービスシーンってなんのことかしら?」
と俺に問いかけてくる。
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