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精霊魔術学院の妖精使い  作者: 神凪儀


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第三部 二章古都の街並み(VII)

「じゃあリアナ、とりあえず泳げる腰が浸かる位置まで海にはいってくれ」

「分かったわ」


 そう言ってリアナは腰が浸かる位置まで海を歩き、

「この辺りで良いかしら?」

「ああ、じゃあ手を出しな」

「手?」


 そう言いながら差し出された手を俺は握って、少しずつリアナから離れ始める。

「じゃあこのまま俺が少しずつリアナを引っ張っていくから、リアナは顔を海につけてバタ足で泳いでみな」

「えっ? ちょっと! いきなり人の手を握っておいて言うことがそれっ⁉」

「文句を言わずさっさと泳ぐ」


 俺はリアナの抗議を無視して少しずつリアナを引っ張っていく。それにつられてリアナも渋々と泳ぎの練習に取り掛かる。

 顔を海につけて、そのまま足を交互に動かし始める。しかし力み過ぎているのか、全然前に進まない。

「リアナ、バタ足は必要最低限の力でいいぞ、そんなに力む必要はない」


 俺がそう言うと、リアナの足の力が少しずつ抜けていく。いい感じだ。

「そうだ、そしてそのままただ足を動かすんじゃなくて水を蹴るようにして足を動かすんだ」


 この言葉を聞いて、リアナの足の動かし方が上手くなってくる。アドバイスをしてからすぐに良くなる辺り、やっぱり何事に対してもすぐにできるようになるだけの才能はあるんだろうな。


 俺はそのままリアナを引っ張りながら海を後退していく。しかし、

「ぷはぁっ! もう限界!」


 リアナが息が続かなくて顔を上げる。

「なら途中で息継ぎをしながら足は動かし続けるんだ」

「息、継ぎしながら、っていうけど、これ、結構大変よ?」

「なれたら楽にできるようになるぞ」


 俺はそのままリアナを引っ張り続ける。そしてリアナは顔を上げたままバタ足を続ける。

「顔を海につけて水に慣れなくて大丈夫か?」

「う、うるさいわね、ちゃんとやるわよ」

 そう言ってリアナは顔を海につけて水に慣れる努力をする。


 この分だと案外早く泳げるようになるかもしれないな、なんて思ってゆっくりと引いていたリアナの手を離してみる。しかし、急にリアナが両手をバタバタと動かし、顔を上げて、

「ちょっと! 急に手を離すなんて何を考えてるのよっ!」

「上手い感じにバタ足ができていたから一人で泳げるんじゃないかと思って手を離してみた。駄目だったか?」

「……駄目よ、あたしはまだ泳げる自信ないし。ちゃんと手を握ってて」


 珍しくリアナがしおらしい。仕方ないな。

「分かった。手は握っておく」

 そう言って再度リアナの手を握り、少しずつ引っ張っていく。


 リアナは先程よりも上手く泳げている。少しずつ、しかし確実に上手くなっている。さっき教えた通り、途中で息継ぎのために顔を上げてはまた海に顔をつけたりと言われたことを素直に実践している。

 それなら、と思い俺の肩が浸かる深さまでリアナを誘導してみる。


 少しずつ深い場所にも慣れさせていこうと考えてリアナを砂浜から少しずつ引き離していく。

 リアナは付いていくのに精一杯らしく、自分が砂浜から離れていることに気がついていない。ちょうどいいからこのままどんどん砂浜から離れていく。


 もう俺も泳ぎながらリアナを誘導している。つまりは俺でも砂浜に足が着かない場所まで泳いできているのだ。

 そしてそれで分かった事がある。コイツ、海に顔をつけている時に目を瞑っているな。


 だからこんなところまできても気付かない。全く、海の中でも目を開けていないと意味が無いのだが怖がったな?


「リアナ、海に顔をつけてる時に目はちゃんと開けているか?」

「え? 開けてないけど?」

「いや、開けろよ。じゃないと自分が今どこを泳いでいるか分からないだろ? 海の中で目を開けてみな」

「海って塩水よね? 目を開けたら目が痛くなるんじゃないの?」

「ならないから大丈夫だ、それより早く目を開けて確認した方がいいぞ?」

 俺はそう言ってリアナに海の中で目を開けるように促す。


 そして促されたリアナは渋々と、そして覚悟を決めたように息を吸い、海に顔をつけた。おそらく海の中で目を開ける覚悟を決めたのだろう。そして、急に顔を上げ、


「ちょっとハヤト! ここ砂浜に足が着かないじゃないっ! どれだけ遠いところまで引っ張ってるのよ!」

「いやそんなに遠くないだろ? それに海の中で目を開けていないのが悪い」

「まさかこんなところまで連れ出されるとは思わなかったのよ!」

「そうか。ちなみに帰りは手は引っ張らないから、自力で帰れよ?」

「……え? うそでしょ?」


 そんなリアナの言葉を無視して、俺はリアナの手を離そうとする。しかし、リアナががっちりと俺の手を握って離してくれない。

「いやいやちょっと待ちなさいよ、本当に手を離そうとするのやめなさいってば!」

「だけどこれじゃ泳ぎの練習にならないだろ? というかもう練習は十分だろ?」

「全然十分じゃないからっ! お願いだから手を握ってて!」


 リアナにはまだ自力で泳ぐのは無理らしい。

「仕方ないな、これだからリアナは」

「何よ、仕方ないでしょ……」


 ああ、本当に仕方がないから俺はまたリアナの手を引っ張りながら今度は砂浜に向かって泳ぎ始める。そしてそれに追随するようにリアナもバタ足を始めるのだった。

 そしてさほど時間もかからずに砂浜に戻ってきて、リアナの足が着くところまで手を引いて誘導してやる。


 足がついてからもそのまま引っ張り続け、完全に海から上がって砂浜まで戻ってきたところで、

「どうだった? 案外遠くまで泳げただろ?」

「あたしは途中で手を離されないか冷や冷やしたわ」

「あれだけ力強く握られてたら手の離しようがないだろ」

「手を離されないように力強く握ってたのよ! おかげで足だけじゃなくて手まで疲れたわ」


 そう言ってリアナは手をプラプラと振っている。かなり強く手を握っていたからな、もしかしたら足より疲労が溜まっているかもしれない。


「リアナ! ハヤト君との海はどうだった?」

「ハヤトってば酷いのよ⁉ あたしが海の中で目を開けてないのをいいことに砂浜から離れたところに連れて行って手を離そうとしてきたんだから!」

「それで一人で戻って来れたの?」

「……ハヤトの手を全力で握って離れないようにして連れて帰ってもらったわ」

「でもバタ足はできるようになったんだね、成長してるからいいんじゃない? それにハヤト君と自然に手を繋ぐこともできたでしょ?」

「なっ⁉ ……なんの事かしら?」


 リアナとミルティアーナが話し合っている、俺に聞こえる位置で。

「ティアーナ、あまりリアナを虐めてあげるな、泣くかもしれないぞ?」

「泣かないわよ!」

「実は泣いて喜んでいたり?」

「だから泣いてないってば!」

「喜んでたところは否定しないんだ?」


 そう言われてリアナの顔がまた赤くなっていく。いい加減慣れたらいいのに、と思いながらもリアナのあの冗談を受け流せない性格は俺もいいと思っているから何も言わないでおく。


感想、頂けると嬉しいです。

初心者だからこそ自分で気付ける点と気付けない点がありますのでよかったらコメントを残していってください。

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