第三部 二章古都の街並み(V)
「……アンタの能力、反則なんじゃない?」
「そんなことないだろ。というか戦う相手に毎回そうやってケチをつけて加減してもらうのか?」
「そんなつもりはないけど……やっぱり強すぎるわよ、おかげでもう霊威が底を尽きそう」
「じゃあ今日はこのくらいにして休むか、部屋に戻って紅茶でも飲もう」
「そうね、霊装顕現ができるようになったから聞きたい事も増えたし」
そんなやりとりをしてからミルティアーナとリアナの三人で部屋に戻り、汗を流した後、公爵邸のテラスで三人で紅茶を飲んでいた。
「それで、聞きたい事が増えたってのはどういうことだ?」
「ハヤトが模擬戦の時にあたしの霊威を吸収してたじゃない? それって霊装顕現できる時間が減っていくって認識で合ってる?」
「ああ、合ってる。霊装顕現は霊威の消耗が精霊の召喚よりも激しいからな。その状態で霊威を吸収されたら戦える時間はどんどん減っていく。だから後ろに下がったのは悪くなかったが、俺を引き離せなかったのは減点だな」
「いや、アンタをどうやって引きはがせばいいのよ! ミルティアーナですらアンタと戦って苦戦するのにあたしじゃどうやっても無理でしょ!」
「それを考えながら戦うんだよ。いつ、どんな時にどんな相手が襲ってくるか分からないからな」
そう言いながら俺はメイドが淹れてくれた紅茶を飲む。貴族の暮らしっていいな。紅茶とか勝手に淹れてくれるんだから。
「後は集中力が乱れると霊装顕現が解けることもあるからそれも注意しないとね」
ミルティアーナの助言にリアナはふんふんと首を縦に振っている。
しかしこれでリアナも霊装顕現ができるようになったか、だとしたら後期からはもう霊威の制御を見る必要はないな。後は体術に専念できる。いや、霊装顕現の維持をした状態での戦闘訓練も必要か。
そんなことをリアナとミルティアーナが話している側で考えていると、
「そういえば霊装顕現ができるようになったからあたし、もう霊威の制御の練習はしなくても大丈夫なの?」
「霊威の制御の練習はしておいて損はないぞ。なんせ全ての基礎だからな。精霊魔術を使うにも、霊装顕現を扱うにも、霊威の制御が必要になる。緻密な制御ができるほど精霊魔術の精度も上がっていくから霊威の制御の練習は怠らない事をお勧めする」
「そっか、じゃあ毎日続けないと駄目ね。でもこれで後期からは体術に専念できるわね」
「となるとしばらくは俺の出番はないな、ミルティアーナに任せるよ」
「任されました、リアナを立派な格闘家にしてみせるから期待しててね!」
「いや、アンタたちはあたしを何にするつもりなのよ……」
リアナが呆れながら話を聞いている。しかし、俺もリアナも面白半分でリアナに体術を叩きこむつもりでいるから卒業する頃にはそこいらの帝国騎士より強い精霊使いになっているだろうな。
「とりあえずリアナの夏季休暇の課題は霊装顕現の維持と扱いになれること、そして体術だな」
「そうだね、霊装顕現はできるようになってからが精霊使いとしてのスタートラインだし、体術はまだまだだからね」
「アンタたち、せっかくの夏季休暇なんだからもう少し遊んだりしたいとか思わないの? せっかくローゼンハイツ領に来てるのよ? 普段なら来る機会のない場所なんだからもうちょっと満喫しなさいよ」
「と言われても、もう街は見たしな。孤児院も見た。正直俺は珍しい食事にありつけてあの上質なベッドで眠れたらそれで満足だ」
「あ、だったらお姉ちゃんは海に行きたいな。リアナも言ってたよね? プライベートビーチがあるって。そこでハヤト君に水着を披露しないと」
そういえばミルティアーナは海に行きたいとか言ってたな……。
だが、リアナは泳げない。初めて会った時は水死体としてこんにちはしたくらいだからな。精々砂浜で遊ぶくらいになるだろう。いや、せっかくだからリアナに泳ぎを教えるか?
「そうだな、海に行くのも悪くないな。そこでリアナに泳ぎを教えよう」
「うげっ、教えなくていいわよ!」
「泳げないとまた水棲魔獣の討伐依頼で溺れることになるぞ?」
「それいつまで引っ張るのよ! いい加減忘れなさいよ、灰にされたいのっ!」
「俺を灰にできる日が来るとは思えないな」
「ぐぬぬぬぬぬぬぬ……」
リアナが悔しそうに唸っている。そういえば、ローゼンハイツ公爵家に来てから海の話が一度も出ていないのはこの話を家族の前で蒸し返されることを懸念していたからか? だとしたらよく今日まで隠してきたな、と言いたいが初日に全て話しているからな……家族もさぞかし心配しただろう。心肺停止した娘に。
「それじゃあ明日はプライベートビーチに行くってことでいいわね?」
「うん、それでお願い」
そういうわけで俺たちは明日、海に行くことになった。
感想、頂けると嬉しいです。
初心者だからこそ自分で気付ける点と気付けない点がありますのでよかったらコメントを残していってください。




