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精霊魔術学院の妖精使い  作者: 神凪儀


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第三部 二章古都の街並み

 ミルティアーナを自室に連れて行った後、少しの間休んでミルティアーナの回復を待っていたところで朝食の知らせが届き、公爵一家と朝食を取り、俺とミルティアーナはリアナに連れられてローゼンハイツ領の街を歩いていた。王都ほどではないが学院のある街より歴史のある古都のため、歴史的な建造物も多い。だからなのか、人の出入りが多い。恐らく街の住民だけではなく観光に来ている人も大勢いるのだろう。大きな街道をひとつ外れて道を歩くと、水路があり、水路には小舟が浮いている。


「この街では水路で移動したりもできるのよ? 水路が大きいから物の輸送にも使えるし観光客を乗せて街の案内をしたりする人もいるわ」

 水路の上に架けられた小さな橋の上でリアナの説明を聞いて、

「こういう他の街にはない習性のある街ってなんか珍しいというか見ていて面白いよな」


 なんて言うが正直水路の小舟に乗りたい。暗殺術に水の上を走る術があったが小舟で水路を移動するなんてことはしたことがなかった。

「あら、じゃあ乗ってみる?」

「乗れるのか?」

「頼めば乗せてくれるわよ。観光客用の小舟があるくらいなんだから」


 そう言ってリアナは早速近くの小舟で待機している若い男に話しかけている。若い男はリアナが公爵家の人間だと理解しているのか、酷く恐縮しているようにも見えるが……それでも怯えているわけではないらしい。単に話しかけられたのに驚いただけか。そんな事を考えていると、リアナが戻ってきて、


「あの人の小舟で街の水路を一周してくれるって。お金は払うって言ったんだけど公爵家の人間からは取れないって言われたわ」

「慕われてるんだな」

「慕われるように努めてきたつもりよ」

「それが学院でもできてたら普段からお友達に囲まれてただろうにねー」


 ミルティアーナがリアナに茶々を入れる。しかしリアナは、

「学院ではアンタたちがいるからいいわよ、確かに最初は馴染めなくて悩んだりしたてたけど、今はハヤトとミルティアーナがいるでしょ?」


 思いの外落ち着いていた。俺は過去にリアナを人間関係でからかった記憶から、てっきりミルティアーナの茶々に反発すると思っていたが、今のリアナはそんなことは気にしていないらしい。


 そんなことを考えながら小舟に乗っている男の指示に従って俺たち三人も小舟に乗る。

「いやーお兄さん両手に花で羨ましいね! リアナ様と仲良くしてる男は初めて見たよ」


 小舟を漕ぎ始めた男に話しかけられる。しかし両手に花か、片方が姉でもう片方が貴族、しかも公爵家ときたらどちらも花にはなりえないだろう。

「リアナ様はこの街の男とは仲良くしてないのか?」


 一応人前だからリアナ様と呼んでおく。

「してないね、男は皆リアナ様にお近づきになりたがってるんだが中々ガードが固いというか人を寄せ付けない雰囲気があるからね。それでも凛々しい御姿を見るたびに皆リアナ様とお近づきになりたいよなって話をよくしてたよ」

「この街ではモテてたんだな、リアナ様」


 俺はからかいの意味を込めてリアナに言う。そしてリアナはそれが分かっているらしく、

「この街では、って部分が余計よ。別にアタシより姉さまの方が人気が高いわよ」

「いやいや、シルフィア様はリアナ様より冷たい印象がありますからねぇ、男に人気なのはリアナ様ですよ」


 男がフォローなのか事実なのか良く分からん事を言うが、都合がいいから乗っておくことにする。

「だそうだぞ? この街では姉より人気があるらしいじゃないか。街の男に手を振ってやるくらいしてやったらどうだ?」

「そんな恥ずかしいことするわけないでしょ! アタシは見せ物じゃないのよ!」

 なんて言いながら急にリアナが立ち上がり──小舟が大きく揺れた。

「きゃっ」


 リアナがそのまま体制を崩して俺の方に倒れ込んでくる。そのままリアナを抱きかかえるように受け止めて小舟の椅子に座らせる。

「大丈夫か?」

「ええ、ありがと」


 リアナとそんなやりとりをしていると、

「お姉ちゃんを忘れて二人の世界に入らないで欲しいなぁ?」

 とか言ってくる。別に忘れてたわけじゃないが、リアナの話をしてたらミルティアーナから意識が逸れただけなんだ。

「誰が二人の世界に入ってるのよっ! たまたまバランスを崩しただけでしょうが」

「えー? 本当にたまたまかなぁ? 実はハヤト君に抱き留めてもらえるのを期待してたんじゃないの?」


 ミルティアーナがリアナをからかっている。いたずらっぽく言うミルティアーナと顔を赤くしながら反論するリアナを眺めるのもほどほどに、小舟から周囲を見渡してみる。するとちょうど露天商が並ぶ道の水路に入ったのか急に周囲が騒がしくなる。ガラス細工を売る露天商、宝飾品を売る露天商など売り物は様々のようだがどこも活気がある。


 それらを眺めていた俺に気を使ったのか、小舟を漕いでいる男が、

「この辺りの露天商は他所の領地や他国から持ち寄った品を売ってるんだ。意外と掘り出し物が見つかったりするからプレゼントを買う時はこの露天商の通りを使うといいよ!」


 なんて言ってくる。別にプレゼントする相手がいないから活用するつもりはないが、他国から持ち寄られた品には興味があるな。そんな事を考えていると、

(ハヤト、近くに高位精霊の気配があるわ)

 ツィエラが話しかけてくる。そして周囲を見渡して精霊を探すが、特にそれっぽいのは見つけられなかった。

(この街中で高位精霊? だがどこにもいないぞ?)

(多分精霊鉱石に封印されてるんじゃないかしら、露天商で精霊鉱石を売っているところはない?)


 俺はツィエラの言葉を聞いて、小舟を漕ぐ男に、

「この露天商って精霊鉱石を売ってたりするのか?」

「たまに精霊鉱石が売られてる時があるらしいけど、滅多に見かけないねぇ……それに精霊鉱石って貴族が買うもので平民じゃ買っても霊威が少ないから意味が無いよ」


 確かに平民は霊威が少ないのが大多数だから精霊鉱石を買ったところで何の意味もない。なら何故露天商で精霊鉱石が売られているんだ?

「この露店って貴族が利用したりするのか?」

「いんや、貴族様はもっと落ち着いたところで買い物をするから露店を利用するのはこの街の平民や観光客だね」


 この街の平民や観光客、ということは観光客が記念に精霊鉱石を買っていってるのだろう。精霊鉱石の産地がローゼンハイツ領なのかは知らないが。

(だそうだ。貴族が利用しないなら買われる心配もないだろ、高位精霊にはこのまま眠りについていてもらおう)

(そうね、高位精霊には悪いけど知らない振りをしておきましょう)

 ツィエラとそういう結論に至ったところで、

「ハヤト君ハヤト君、プレゼントの話が出てから露店について詳しく聞いてるけど意中の相手でもいるのかな? ちょっとお姉さんに教えてくれないかな?」


 なんてミルティアーナが言い寄ってくる。しかし、

「ハヤトがプレゼントをあげるならツィエラくらいしかいないでしょ」

 リアナは俺のプレゼント相手はツィエラだと勝手に予想しているらしい。

「別にプレゼントなんて考えてない。昔は俺も露店商相手に物を売ったりしていたなって思ってただけだ」


 実際に精霊鉱石を売って路銀に変えていたりしたしな。あの時は金の事しか考えていなかったからその精霊鉱石がどうなるのかなんて考えもしなかったが、俺が売り払った精霊鉱石はどうなったんだろうか。誰かが買って封印を解いたりしたのか、それとも今も精霊鉱石に精霊が封印されたままなのか、少し気になるな。


 露天商の並ぶ水路を出ると、また水路に静けさが戻る。小舟が進むにつれて喧噪が遠ざかっていき、今度は平民の住宅街に出る。

「この辺りは平民の住宅街で特に見どころはなさそうね」


 リアナがばっさりと言い切る。だが確かに見どころはない。たまに窓から家の様子が伺えて、家族で団欒している家、子供が遊んでいる家、誰もいない家など様々な家模様が垣間見える。その家を見るのも飽きた俺は、そういえば水路をあまり見てなかったと思い小舟から顔を出して水路を眺める。すると水路には魚が泳いでいたり、小蟹がいたりと意外と自然に溢れていた。


 水路の脇には釣りをしている人もいる。住宅街は静かだからこういった趣味に走ることもできるのだろう。

「ねえハヤト君、住宅街の家族の団欒、見えた?」

「ああ、見えた」

「私達にも親がいたらあんな風に家族で笑い合ってたのかな」

「俺達の親に金があればあんな風に笑っていられたのかもな」

 俺達は金がないから捨てられたんだ。だから家族がいてもあんな団欒は無かっただろう。


「それに俺は孤児院での団欒も悪くなかった」

「……そうだね。ハヤト君と私とイリスとツィエラで一緒にいたもんね。あれも団欒だよね」

「ちょっと、あたしいない世界に入り込むのやめてくれるかしら?」

「あ、リアナいたんだ」

「灰にするわよ? ミルティアーナ」


 相変わらず仲が良いのか悪いのか、俺は溜息を吐きながら二人を仲裁する。

「舟の上で喧嘩は勘弁してくれ、落ちたらどうするんだ」

 そう言っている間に舟は一周したらしく元の場所へ戻ってきた。俺達は舟から降りて男に礼を言ってその場を後にする。


感想、頂けると嬉しいです。

初心者だからこそ自分で気付ける点と気付けない点がありますのでよかったらコメントを残していってください。

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