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オリハルコンの女~ここから先はわたしが引き受けます、出来る限りではありますが~  作者: 五十嵐 あお


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二人が立てた計画はこうだ。前リッジウェイ子爵の楽しみを奪ってしまうのは申し訳ないが、オランデール伯爵へは公爵からサブリナの妊娠を伝える。それもサブリナの子はジャスティンとの間に出来たのではないと念を押すことを忘れずに。しかし、どうして公爵がサブリナの妊娠を知ったのか伯爵は不思議に思うだろう。そこでデリシアに登場してもらうのだ。伯爵がサブリナを呼び寄せようと送り込んだデリシアが発端となり、いくつもの偶然が連なった体を公爵が装う為に。


ファルコールへ向かう際に公爵一行が偶然拾ってしまったデリシア。名前を聞くも直ぐに倒れてしまい、それ以外は何も分からない。けれど意識が薄れる中デリシアは一通の手紙を差し出していたのだ、何かを託すように。


公爵一行には差し出された手紙だけが意識を失ったデリシアと名乗る女性を知る手掛かり。そこでルール違反であることは承知の上で手紙を開封させてもらったのだ。ところがまたしても偶然が起こる。手紙は公爵がよく知るオランデール伯爵へ宛てたものだった。しかも、つい先日までオランデール伯爵家の嫁だったサブリナからの。


ファルコール到着後、公爵はスカーレットにデリシアへ医師の診察を依頼する。序にスカーレットの話し相手のサブリナとの面談も。ここでまた偶然が重なる。偶々公爵が希望する二人の人物が一緒にいるという。


「それは出来すぎじゃないかしら?」

「大丈夫。僕は公爵でなければ舞台俳優だったんだ、上手く話すさ」

「まあ、その舞台を最前列で観たいわ」

「残念ながら美しい君が客席にいたら、緊張で僕は大根役者に成り下がってしまう」

「ふふ、だからわたくしはあなたの素晴らしい演技をいつも見れないのね」


そして直ぐにデリシアの身元はサブリナにより判明。デリシアが持っていた手紙もサブリナが渡したもので間違いないということも。

こうして公爵はデリシアという伯爵家のメイドがたいした金も持たず王都へ向かっていたこと、伯爵からサブリナへの提案とそれに対するサブリナの回答、更にはサブリナの妊娠を知ったことにする。


偶然が続くリプセット公爵夫妻のファルコールでの休日の始まり。その偶然はオランデール伯爵にそう見えるだけで、実は必然という一本の太くしっかりした糸で結ばれている。


重要なのは、サブリナが伯爵の親切な申し出である家を断った理由を成立させること。更には接触を試みようなどとは思わせないことだ。


「そこであなたは最高の演技をするのね、親切な伯爵に家ではなく生まれて来る子か、これから大切な時期を迎えるサブリナ嬢に何か贈るほうが良いというアドバイスをするという」

「その段で相手はキャストール侯爵家の使用人だとも伝えないと。伯爵はどういう反応をするだろうか」


ただリプセット公爵としては、話をここで終わらせるわけにはいかない。立場上、オランデール伯爵領を心配しなくては。何せ息子は種無し、娘は潔癖症なのだ、オランデール伯爵家の未来は暗い。

そこで、公爵は伯爵にそれこそ親切な選択肢を与える。一つは、このまま。未来が見通せない状態で苦しむ毎日、しかもまともに働かない息子と結婚が遠くなった娘を抱え。翌年には、今までの事業内容を反映した税が課せられることくらいだろう、伯爵が確実に見通せるのは。


もう一つはリプセット公爵家がオランデール伯爵家を一時預かりにすること。それも出来るだけ早めに。


そうすることで税と今後の領地運営等全てを肩代わりするというものだ。勿論、オランデール伯爵領で生産されたものの優先権は伯爵に与え事業展開をしてもらい、来るべき時に買い戻しが出来るよう取り計らう。今までのような手腕で事業を進めれば、伯爵は十分な資金を蓄えられるはずなのだから。そして、その来るべき時とは、クリスタルだ。ジャスティンに子が難しいとなれば、後はクリスタルの潔癖症をどうにかして婿を取るしかないだろう。そのタイミングで、預かりになっていた領を買い戻せばいいのだ。


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