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オリハルコンの女~ここから先はわたしが引き受けます、出来る限りではありますが~  作者: 五十嵐 あお


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『スカーレット嬢、サブリナの妊娠が確定したらオランデール伯爵家に少しお仕置きをしてもいいだろうか。サブリナは優しい子だから、あの家に対して何も思わないようだが、わたしは違う。ああ、でも安心してくれ。直接何かをして問題を起こすようなことはしないから』


薫は前リッジウェイ子爵がそんなことを前回ファルコールにやって来た時に言っていたのを思い出した。しかも前子爵のその言葉に『楽しそう』と夫人が同調したことも。


前子爵のお仕置き、楽しそうと喜ぶ夫人。それに加え目の前のリプセット公爵夫人の表情も楽しそう。これはその対象となるオランデール伯爵家にはちっとも『少し』で済むようなお仕置きではなさそうだ。否、尺度は人それぞれ。前世でも二、三人から同意を得られれば『みんなが』と言い切っていたなっちゃんがいたではないか。だから薫は『みんながそう言ったので、大神さんにお任せしたいと思います』と何度も仕事を振られていたのだが。


一体どんな『少し』のお仕置きを前リッジウェイ子爵が仕込んだのか、薫は黙って夫人の言葉を聞くことにした。しかし夫人はお仕置きそのものの話をする前に、重要なことだからと前リッジウェイ子爵夫妻がオランデール伯爵家でどういうもてなしをうけたのかをサブリナに伝えた。


関わってはいるが第三者の薫からしても酷い『おもてなし』。二人の娘である心優しいサブリナには耐えがたい話であることは言うまでもない。それなのに夫人が伝えるのには大きな意味があるということだろう。


「あなたのご両親はどうして反論もせず、オランデール伯爵夫妻の言葉を聞き続けたか分かる?」


夫人は前リッジウェイ子爵夫妻がその場で何も言わなかったのは全てサブリナの為だと伝えた。二人はサブリナが耐えた年月を思えばどうってことのない時間だと思っていたらしい。そしてその長い年月、助けられなかった自分達に対して怒りを感じたという。では、何故耐えたのか。それは二人がオランデール伯爵家を訪ねた時には、全てが分かった後。だからこそ話を聞きつつも、時折申し訳ないと謝ることでオランデール伯爵家夫妻から更なる毒を吐き出させたのだ。毒は言えば言う程、更なる毒を呼ぶだろうと。お陰でその日の内に離縁まで辿り着いた。そしてもう一つ、前子爵夫妻は重要な状況を手に入れていたのだ。オランデール伯爵夫妻がもう二度とサブリナの顔など見たくないという。


前子爵は、伯爵家の仕事がどうせその内上手く回らなくなると予想をしていた。しかし散々不要だと言ったサブリナに会い、理由を確認することはプライドが許さないだろう。その前にキャストール侯爵領のファルコールにいるサブリナがいつ王都へ戻るかなど、散々文句を言い続けた前リッジウェイ子爵夫妻に尋ねられるはずがない。そう、二人はオランデール伯爵家の者が二度とサブリナと接触しないよう精神的な壁も作っていたのだ。


「それなのに、とうとうオランデール伯爵はデリシアさんを使い、サビィさんに家の用意があると伝えてきた。もう分かるわね、あなたの予想は正しいと」

「オランデール伯爵家は上手く回っていないのですね。セーレライド侯爵家のことだけではなく、全てが」

「ええ、領民が困るほど」

「それは困ります。伯爵家内のことが領民に影響を及ぼすだなんて」

「大丈夫、それは早い内にわたくしと旦那様が考えるから。あなたのお父様、前リッジウェイ子爵が何の為に色々お買い物を始めたのか分かったお陰で、ジョイスより良いお話が書けそうだし」


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