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オリハルコンの女~ここから先はわたしが引き受けます、出来る限りではありますが~  作者: 五十嵐 あお


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直ぐに言葉が出なかったジョイスを畳み込むように、父は立て続けに質問をしてきた。一拍の出遅れがどうなるのかを教えるかのように。


「リプセット公爵家の当主を巻き込むんだ、ジョイス、おまえの言葉を信じる為の理由が欲しい。おまえは今、キャストール侯爵家に仕える者。そしてオランデール伯爵家はリプセット公爵家が守らなければならない家、その事実があるにも関わらず、信じるにはそれ相応の理由が必要だとは思わないか。そのオランデール伯爵家の使用人を含め全てをおまえ達が我々のやって来ることを見越して仕組んだことだと思われない為に。例えばスカーレット嬢が慕うサブリナ嬢の恨みを晴らす為の作戦だとな」


父の言い分は御尤も。ジョイスがキャストール侯爵家のスカーレットの為に動くように、父はリプセット公爵家に属するオランデール伯爵家を守らなければならない。


「息子だから全てを信じて欲しいとは言いません。ですが、リプセット公爵家の三男としての意見には耳を傾けてもらいたく思います。わたしがこうして二人と話をしたかったのは、お察しの通り頼みたいことがあるからです。しかしそれはオランデール伯爵家を潰して欲しいということではない。これ以上、オランデール伯爵が無駄なことを、そして仕える使用人を失わせない為に協力して欲しいのです」

「無駄なこととは?」

「先ずは大前提からお話しします。サブリナ嬢はオランデール伯爵家など既に何とも思っていません。お二人も彼女の離縁に至る過程をキャストール侯爵から何となく聞き及んでいるでしょう。だから父上もサブリナ嬢の恨みという言葉を使ったのだと思いますが、彼女にそんな気持ちは全くありません。それは清々しい程に。どうしてだと思いますか?わたしの手紙には彼女が色々なことに挑戦しようとしているとは書きましたが、それだけではありません。過去を塗り替える程愛せる男性を見つけたのです。来年の春には結婚を予定する程」


ジョイスはサブリナの結婚相手がキャストール侯爵家に仕えるものであること、既に前リッジウェイ子爵夫妻にも挨拶を済ませていることを伝えた。


「ですので、今回のお遣いはデリシアさんだから失敗したのではなく、誰が来ようとサブリナ嬢はオランデール伯爵の用意する家を受け取ることはありません。彼女は愛情と幸せを共有し合える男性と共にファルコールで過ごす未来しか思い描いていない。既に過去となったオランデール伯爵家のことは寧ろ考えるのも嫌でしょう。だから今後オランデール伯爵が同じことを、即ち無駄をしないよう協力をお願いしたいのです」

「ジョイス、おまえにしては随分人の気持ちを考えるようになったのだな。では、伯爵の言い分はどうする?伯爵はサブリナ嬢が変な再婚話に巻き込まれず自由に暮らす為に家を用意するだったか。その善意をどうするのだ」

「はい。わたしが二人に頼みたいのは、伯爵のその善意を『リプセット公爵夫妻が偶々デリシアというオランデール伯爵家の使用人を助けたことで知った』ということにしていただきたいのです」


ジョイスは母が『聞いてみましょう』と父に言うと、今度は間髪を入れず二人に頼みたい内容を伝えた。そしてもう一つ、どうしても二人に伝えたいことも。


「これもリプセット公爵家の三男として伝えさせて下さい。事実ではなく、サブリナ嬢が思ったことなので確認のしようがありませんでしたが。彼女は伯爵の今までの様に何もしないで過ごせばいいという言葉に引っ掛かりを覚えたようです。領地の外れに使用人付きの家を用意するのは、使用人という名の監視の元仕事をさせる為ではないかと。オランデール伯爵家は上手くいっていないのでは、領地運営が?」

「さあ、ジョイス、食後のお茶をお願いしましょう。呼び鈴を鳴らしてもらえるかしら。それと先程のあなたの頼みは少し答えを待ってちょうだい。そのデリシアさんという使用人とサブリナ嬢とも少し話をしてみないとね」


母の言葉にジョイスは頷きながらも『俺に男として格好を付けさせて下さい』と伝えたのだった。


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