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オリハルコンの女~ここから先はわたしが引き受けます、出来る限りではありますが~  作者: 五十嵐 あお


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本当に良く出来た報告システムだとジョイスは思った。

夕食も終わり、後は明日に備えるだけとなった段でケビンに連絡が来たのだ、明日の朝、間違いなくリプセット公爵一行が隣町のホテルを出発すると。大凡の出発予定時刻に護衛を含めた人員数の情報まで付け加えて。これが国境を有し、守り続けてきたキャストール侯爵家なのだろう。

そして前キャストール侯爵の代に決まった隣国公爵家の次女との縁を現侯爵は大切にした。少しでもこの国境の町ファルコールからリスクを取り除く為に。二人の関係が良かったからこそ、侯爵夫人が亡くなって随分経った今でも両家の縁は続いている。実に見事な政略結婚だ。ジョイスが思い出せる限り、侯爵と夫人は恋に落ち愛し合い結婚したようにしか思えないというのも。


「ジョイ、重要なことだからそろそろ伝えておこう。今回のリプセット公爵に関する報告の終点は俺達までだ。しかし、他国の一行や怪しい商団などの通過にあたっては、ケレット辺境伯にも必ず伝える。特に人数は重要だから、しっかり把握する必要がある。勿論、ケレット辺境伯からもそういう連絡はあると分かるな」


ジョイスはケビンの言葉に頷くと、気になったことを透かさず質問した。


「だがケビン、以前の国境検問所はキャストール侯爵家が管理していたが、今は王家管轄。しかも、キャリントン侯爵が送ったデズモンドが中心だ。情報を得ても何かあった時に動き辛いのではないだろうか」

「そこは大丈夫。国境検問所にいる騎士は元々キャストール侯爵家の私兵だったヤツが大半。加えてあいつは考え方に柔軟性がある。国境を守ることに変なプライドは不要だと考えているようだ。それに…」


ケビンが公の機関としての国境検問所ではなく、国境を守るキャストール侯爵家の動きを教えてくれたことがジョイスは嬉しかった。このファルコールの館の長的役割のケビンに認められたようで。しかし、そのケビンがデズモンドを何となく信用していることは気に食わない。そして、何かを言い淀んだことも。


「ケビン、それに、何だ?」

「実はまだ本人だけが知らされていないのだが」


ケビンの話は数日前にスカーレットとデズモンドが話し合った内容だった。ジョイスが『聞かなかった』、『見なかった』、だから『尋ねない』を貫いたあの時の。だから『本人だけが知らされていない』ではなく、関係する者の中で本人だけが知らされていないが正しい表現。しかしケビンから全てを聞き、これでジョイスも更に内側に入れた気がした。


「既にプレストン子爵の意向は確認し、閣下へも報告書を送ったのだが、この話を聞いてジョイはどう思う?」

「確かにデズモンドの意見は正しい」

「ああ。それに俺は理解した、本当にあいつは爵位なんてどうでもいいと思っているんだって。プレストン子爵にしてみれば、筋を通す為にもあいつにこの話を先にしたはずだ。デズモンドは全く聞かなかったことにも出来たのに、権利をリアムに譲るとはな」

「デズモンドは本当に欲しいものにだけ本気を出す男なのかもしれない…」

「そうだろうな。で、ジョイ、おまえは?あの手の男が本気を出すと厄介だぞ」

「どうしてそれを忠告してくれるんだ?」

「さあな。俺も悩むんだ、とあるお方の将来に何が必要か」


そう話してくれる時点で、ケビンが自分を多少気に入ってくれたのだろうかとジョイスは思った。ジョイスはマイナスからのスタート。しかし考えようによっては、誰よりも伸び代があるのかもしれない。


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