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オリハルコンの女~ここから先はわたしが引き受けます、出来る限りではありますが~  作者: 五十嵐 あお


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王都キャリントン侯爵家1

色々な名前が出てきてしまっているので

*キャリントン侯爵家-アルフレッド王子の側近の一人、テレンスの家です。

「では、出立は一週間後だな」

「はい。今までありがとうございました、閣下」

「デズモンド、その挨拶は違うだろ。わたしは、これからもおまえに期待しているのだから」

「勿体なきお言葉、これからも励まさせていただきます」

「国境管理業務もさることながら、キャストールの小娘の動きも監視するように。本当に外へも出られない状況か早めに確かめろ」

「畏まりました」


これでキャリントン侯爵邸には当分来る必要がなくなる。それがデズモンドの正直な気持ちだった。本当はあの挨拶だって、正直な気持ちを表したのだったが…。





デズモンドはその優秀さからキャリントン侯爵に引き立てられ、次男にも拘わらず子爵位を継いだと言われている。誰が言ったのか、デズモンドは知らないが。

知っているのは、そんな噂は力あるキャリントン侯爵家にかかれば、いとも容易く作られてしまうということだ。

そして、デズモンドはその噂が本当になるよう生きてきた、そうしなければキャリントン侯爵家の分家筋であるマーカム子爵家など消えてしまう。


治める領地もなければ、商売を営んでいるわけでもないマーカム子爵家の収入源はキャリントン侯爵家から任される領地管理などの仕事。力関係上、今後の発展の為には優秀な次男を次期当主にとキャリントン侯爵に強く推薦されてしまえば子爵は頷かないわけにはいかない。それが作られた噂が蔓延した後の世間の見方だった。


しかし本当は違う。デズモンドは兄のルパートが努力家で優秀だと良く知っている。ただ困ったことに仕出かしてしまったのだ、恋を。マーカム子爵家の使用人の娘と恋をし、愛を育んでしまったのだ。そしてルパートの誠実さが裏目に出た。相手の娘に金を握らせるでもなく、妾にするでもなく、妻にしようとしてしまったのだった。キャリントン侯爵から勧められていた男爵家の娘を蹴って。

それが兄より劣るデズモンドが子爵位を継いだ本当の理由。父が早めに現役を退き、兄を家から追放しなければならなくなった出来事だった。


その後ルパートはキャリントン侯爵領の開墾地域で日に焼けながら農業指導に当たっている。子爵家とはいえ、貴族として生まれたルパートがお腹の大きな妻を抱え平民として暮らすことは難しい。しかもキャリントン侯爵に睨まれて。

だから労働環境の厳しいところで、労働対価の多くを搾取されようともルパートは受け入れている。そうすることで、マーカム子爵家と自分の家族を守っているのだ。これ以上はキャリントン侯爵の意に背くことは致しませんという姿を見せることで。


しかし、ルパートに今の状況が不幸か尋ねれば答えはノーだろう。あれから結婚した妻との間には既に三人の子供がいる。時折ルパートを訪ねるデズモンドの目には、妻と子供達に囲まれ楽しそうに過ごしているように見える。


その一方、予定外にも爵位を継いでしまったデズモンドが幸せかと尋ねられればこちらも答えはノー。

優秀なルパートを見て育ってきたデズモンドは、跡取りではない次男で良かったと思っていたくらいだ。周囲の期待に応える為の、努力などする必要がないのだから。


母すらそのお気楽そうな考えのデズモンドに『折角綺麗に産んであげたのだから、あなたは貴族と繋がりを持ちたがっている商家のお嬢さんに見初めてもらいなさい』と言う始末。

周囲の友人も『デズモンドなら何もしなくていいから、綺麗な顔の子供を作ることだけに専念する婿になってと言われそうだな』などと冗談交じりに話していた。


母や友人の言葉のように上手い話に乗れるかは分からない。けれど、お気楽なデズモンドは都合良く婿になれなくても、キャリントン侯爵領のどこかで仕事を与えてもらえれば何とか生きていけると考えていた。


だというのに、今のデズモンドはしたくもない努力、作りたくもない表情、やりたくないことだらけの上で、継ぎたくなかった子爵となってしまった。幸せであるはずがない。

ただ、キャリントン侯爵に気に入られ子爵位を継いだデズモンドという状況は女性に受けがよかった。そこはデズモンドも利用して楽しませてもらいはしたが、それもまた大事な仕事。デズモンドは浮名を流しながら、情報収集をしていたのだった。

そろそろデズモンド・マーカスの人物像をと思いまして(書いておかないとわたしが忘れそうなもので…)

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