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オリハルコンの女~ここから先はわたしが引き受けます、出来る限りではありますが~  作者: 五十嵐 あお


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思うだけ。実際にジョイスが人を氷像や、ついでに氷漬けにも出来ないことなど分かっている。それでも美しい男性、しかも公爵家のジョイスが何の感情を浮かべることなく話す姿はデリシアにとり怖い以外のなにものでもない。リアムに向かい『リアムのバカ』と叫びこの状況をどうにかしてもらいたいくらいだ。けれど、ここに来ることを含めどうするかを最終的に決めたのは他でもないデリシア。それにスカーレットを信じるとデリシアは既に決めたのだ。


だからデリシアは、申し訳ないがジョイスとは怖くて話せそうにないので視線をスカーレットへ向けた。その視線を受けて薫はハイエナの隣の小動物が縋るような瞳で見て来たなどと思い、その可愛らしさについ優しく微笑んでみたのだった。当然、デリシアは都合良く勘違いをする、スカーレットはきっと助けてくれるのだと。そして、決心したのだった、胸の内にとどめ続けたことを相談してみようと。昨日リアムに誤魔化しながら話したよりも、もっとちゃんと伝えてみてもいいのではないかと思ったのだ。


「その、わたしはあまり伯爵家で役に立たない人間なのです。そんなわたしでも出来る簡単なことだからと、この仕事を言い付けられました。でもそれすら出来なければ、減給すると執事長には言われています。更に、今回のことは無駄足と見做され、伯爵家を不在にした分も後々お返ししなければなりません。それと、同じ伯爵家で働く兄もペナルティを課されることになっています」


そこにいた三人は全員頭の中で『ん?』と思った。伯爵家を不在にした分を返すとはどういうことだろうかと。そもそもこういう仕事のプロではないデリシアに、いきなりこんなことを伯爵家としてのサポートもなしで押し付けて出来なければ減給というのも変だが。


「デリシアさん、減給の意味は分かるのだけれど、お返しするというのはどういうこと?」

「今回のこと自体がなかったことになると、わたしはこの期間何もせずに伯爵家にいたことになります。労働もせずに、使用人部屋を使い食事をしていたことになってしまうのです。だから、不在にした日数分を後々お返ししなければ…」


どういう理論なのか。それでよくデリシアは納得したものだ。否、納得するしか選択肢はなかったのだろうと思うと、ジョイスの問いにデリシアが伯爵家ではなく仕事に戻ると言った理由が薫はなんとなく分かった。


「命じられた仕事をする使用人として、本当はこんなことを思ってはいけないのですが…、減給、返済、ペナルティ。どうして簡単に家を受け取ってもらうだけの仕事なのに、出来なかった時のことをこうまで提示されたのかが不思議で。それにこれは伯爵様の優しさだと伺っていますが…、分からないのです、何故伯爵様がサブリナ様へ優しさを示すのか。その、お邸内でのサブリナ様への扱いを思い出すと」


薫はデリシアの疑問に全て答えることが出来るだろう。けれどそれを使用人として敢えて考えないようにしてきたデリシアに伝えるべきか分からないでいた。


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