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オリハルコンの女~ここから先はわたしが引き受けます、出来る限りではありますが~  作者: 五十嵐 あお


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リアムの話は薫に過去を思い起こさせるものだった。就職難だった薫もまた安定収入の為、ヤツの会社に給料という餌で飼われていたようなものだ。しかも色々知り過ぎてしまったせいで、給料が目減りしないよう頑張るしかなかった。その中で、薫は搾取されるだけが嫌で各地へ出張をし、その土地の名物を食べ楽しんでいたのだが。


けれどデリシアの状況は思い出された薫の過去とは比べ物にならないほど悪い。サブリナによると、デリシアの給金のほとんどは家へ送られていた。それに対してデリシアが何の疑問も持たないのは、それが当然だと思うよう育ってきたからだろう。しかもリアムの話を聞く限り、これはデリシアだけのことではないようだ。低位貴族に生まれた女性の多くは、家の存続の為繋がりの強い伯爵家以上で働き、そこで得た給金を家へ送る。その額面がそのまま家への貢献度に繋がってしまうことがあるのだとか。ただその額面を決めるのはたいてい本人。デリシアの様にほとんどを、しかも仕える家から送られてしまうのは稀なようだ。心配になった薫がナーサの状況を確認したのは言うまでもない。


『侯爵家はそんなことはしていませんよ。わたしは自分の貯えを含めた必要額以外しか家へは送っていませんから。でも、その額でも両親は毎月ありがとう、無理はしなくていいと言ってくれます。デリシアさんの場合、毎月送られてくるその額が当然とご両親が思っていそうですね…』


ナーサがデリシアへの同情からかつい言葉にしてしまったこと。しかしそれはナーサが口にしなくても、そこにいた全員が分かっていることだった。


これからどうすべきか。

サブリナの離縁は、そのことだけが目的だったのである意味やり易かった。しかもサブリナには可哀そうだったが、使い勝手の良い理由もあってくれた。けれど今回は違う。どこを着地点に設定するかで、そこまでの筋書きも様々なものを用意しなくてはいけなくなる。


「オランデール伯爵はサビィを閉じ込めて、仕事だけをさせたいのよね」

「ああ、都合の悪いことを知るサビィに王都をうろうろして欲しくないんだろな」

「その願いはもう叶っているのに、欲張りね。それに優しいサビィは、余計なことなど口外しないわ」

「キャロル、後ろめたいことがある人間はそれが誰かに知られることを恐れる。そうならないよう、先にそういう人間を手懐けるものだ、どういう手段を取ろうとも、普通はね」

「そうね、デズ。だから伯爵は一見親切そうな申し出をサビィにしたのでしょうね。ジャスティン様にも時折会えるなんていうオプションまで付けて。ジョイ、サビィの家はいらないという希望を叶えつつ、伯爵がこれから先不安を抱えて反省し続ける筋書きを書いて実行出来る?その前に、そのデリシアさんから今後どうしたいのか話を聞いた上で」

「勿論」

「あ、それとサビィはオランデール伯爵領の領民達には不便があって欲しくないの。だから、何も余計なことは言わなかった。そこもしっかり考えて」


薫の言葉に頷きつつも、ジョイスはどんな筋書きを書くにも先ずはデリシアとの対話だと考えたのだった。


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