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オリハルコンの女~ここから先はわたしが引き受けます、出来る限りではありますが~  作者: 五十嵐 あお


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前リッジウェイ子爵夫妻を見送ってから数日後、新たなゲストをファルコールの館は迎え入れた。たった一組のゲストに、必ず数日間の完全休業。こんな緩いホテル業でも儲けがしっかりあるのだから、薫としては驚きだ。前世の会社で回し車の中のハムスターが走る様にひたすら働いても、あれっぽっちの給料だったのに。それは言うまでもなく、わんわん社長のように夜だけ活動的な人物ではないキャストール侯爵がしっかり管理しているから成せることなのだろう。


「今回のゲストがお帰りになれば、残すところ後三組ね」

「内一組は俺の両親というのが、本当に申し訳ない」

「あら、どうして謝るの。公爵家なら使用人も護衛もそれなりに連れて来るでしょう。途中の町も潤う。キャストール侯爵家と関わりのある家々が潤うことはとてもありがたいわ。勿論ファルコールもわたし達も潤うし」

「でも、その分君を余計に働かせてしまう」


ジョイスにとりファルコールで簡易なワンピースを着ていようと、キャロルはスカーレットでキャストール侯爵家の令嬢に変わりない。しかもジョイスはそのキャストール侯爵家に雇われの身。それなのに、雇用主の娘に自分の身内のせいで余計な労働をさせてしまうのが申し訳ないのだろう。

けれどこのホテル業は薫がしたくてしていること。最初の思い付きでは、もっと大々的に運営しようと考えていたくらいだ。それが安全面やら何やらで今の状態に落ち着いたわけだが。


「ねえ、ジョイ、考え方を変えてみて。わたしはここで毎回お客様を迎えているだけ。お茶会の延長よ。どのお茶やお菓子を気に入ってくれるか気に掛けるだけではなく、食事や日々の過ごし方を含めて迎えたお客様におもてなしを提供するの。働くというよりは、お客様を迎えることを楽しんでいると言った方が正しいのかしら。そのせいで、みんなには色々協力してもらうことになってしまっているけれど」


薫はジョイスにただこのホテル業は好きでやっていることだと伝えたかった。しかし言われたジョイスを含めその場に居たナーサ達は、やはりスカーレットはキャストール侯爵家のスカーレットなのだと感じずにはいられなかった。


ホテル業はお茶会の延長、確かにそうだ。ハーヴァンの両親であるクロンデール子爵夫妻とはトビアスの事業に絡め新たな需要の提案をし、その話も水面下で進もうとしている。それに馬に乗る時に着用するあの上着を夫人はとても気に入り、広めていいかと尋ねていた。既に前レヴァリアルド伯爵夫妻からは乾燥キノコ、特に高級品の王都での専売契約の話も上っている。

現役の公爵、それも社交界で強い力を持つと言われている公爵夫人を持つリプセット公爵をとても歓迎する口振りのスカーレットが次は何を考えているのか、誰も口にはしなかったが知りたいと思った。

その場の誰か一人でもそれを尋ねていたら、薫は『忙しい人の折角のお休みですもの、楽しんでもらいたいわ』と答えたというのに。しかし、この答えも皆勝手に『楽しい』の真意は何だろうかと考えてしまったのだろうが。


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