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オリハルコンの女~ここから先はわたしが引き受けます、出来る限りではありますが~  作者: 五十嵐 あお


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王宮では63

手紙を書き終わるとアルフレッドは、敢えてジョイス宛ての封筒を二つ用意した。それぞれに番号を振り、この順番で読むようにと指示まで書いて。


「一通目は俺がした事実を伝えるもの。そして二通目はジョイスの手紙を読んだ後の俺の考えだ。この順番で読めば、行ったり来たりしてジョイスの時間を奪うことを防げる」

「承知致しました。届ける者にも今の注意点を伝えておきます」

「それで、一通目を読んでダニエル、おまえはどう考えた」

「オランデール伯爵令嬢が望みを叶えるには、特別な手段が必要になります。既にジョイス様が潰した彼女が手に入れられると信じていたもの以外が。そしてそれは簡単に見つけられないはずです。その手段には何より忠誠心が必要でしょうから。忠誠心が無ければ、特別な手段は口止め料を要求しかねない。手段は息を止められることがないと己の手を見て分かっていますから」

「だろうな。しかも特別な手段、口止め料の前にそれなりの額が必要になる。王宮にやって来る為だけに、それだけの額を覚悟する必要があるだろうか」

「令嬢は『王宮にやってくる為だけ』とは捉えていないのでは?殿下がどのような話し方をされたのか存じませんが」

「俺が期待したのは新作が出来上がること。それが伝わるよう話したつもりだ。もっと言ってしまうのなら、本当に新作が出来上がったなら、別に誰が持ってきてもいい。令嬢の作品と分かるようOの飾り文字を入れるよう伝えたのだから」

「令嬢に残された道は少ないでしょうね」

「ああ。だからこそ両親がこれ以上危険な道へ進まないよう正しい方向へ導く必要がある。しかしリプセット公爵が一枚噛むならば、オランデール伯爵は導けそうにないと判断したんだろうな」


リプセット公爵がオランデール伯爵家をどうするのか。使えるように矯正するのか、排除するのか、将又他の手段を取るのかは分からない。しかし既に方針は固めていることだろう。国王に休暇の連絡を直接伝えに来たときに、それについても触れているはずだとダニエルは考えた。そして目の前で淡々と話すアルフレッドはそのことについてどこまで知っているのか。表情からは何も読むことが出来ない。けれど、これから何らかの動きがあることだ、その内ダニエルの耳にも届くことだろう。

だからここでまだ起きていない未来を話し合う必要はない。それよりは、過去のことを知りたいとダニエルは思った。


「殿下は何故オランデール伯爵令嬢を試したのですか」

「分からない。しかし大切な民を汚いものの様に扱うことが許せなかった。自分に都合良く捉え、話を進めようとすることも。あの頃の自分に近く思え、同族嫌悪を抱いたのだろう。大切だったスカーレットを悪にして勝手に作り上げたストーリーを推し進めてしまった俺に似ているようで。このまま進めば伯爵令嬢は多くを失う。気付くなら今だ。俺が意図的に作った分岐点ではあるが、それぞれの先は明暗が簡単に分かるはず。ただ伯爵令嬢が何を明で何を暗と捉えるかは分からないが」


ダニエルにはアルフレッドの心理は分からない。クリスタルを試したのは、アルフレッドと同じ轍を踏まない為の優しさなのか、嫌悪から来る黒い感情なのかは。ただあの頃選んだ明が、アルフレッドの今に暗をもたらしていることは間違いないのだろう。


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