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オリハルコンの女~ここから先はわたしが引き受けます、出来る限りではありますが~  作者: 五十嵐 あお


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父親と母親、それぞれ役割が違うように娘に対する接し方も話す内容も違う。前子爵が『本当に幸せ』と言い表したことを、夫人は同性ということもあり違う言葉でサブリナに確認した。


「サブリナ、もしかしたら妊娠の可能性があるのね」

「どうして…、お母様」

「このお茶よ。これはわたくしが妊娠した時にバルラトルが取り寄せて下さったものだもの。驚いたわ、このお茶がファルコールにあって」


夫人は前子爵が他国にいる時にソバ茶の存在を知ったことを話してくれた。その国では妊娠中の水分を紅茶のようにカフェインが入っているものではなく、ソバ茶で取る習慣があったそうだ。そこで夫人が初めて妊娠した時に、他国にいる友人に頼み、取り寄せたのだという。


「この間ノーマンさんがサブリナとの関係を、わざわざ王都まで出向いて説明してくれたでしょ。だから妊娠していてもおかしくはないもの」


夫人の言葉に薫は驚いた。ノーマンはサブリナの両親、前リッジウェイ子爵夫妻に王都で全てを話してきたのだ。その辺は何となくぼかしたのではなく、全てを。確かにノーマンならそうしてもおかしくない。サブリナとのことがあった翌日にスカーレットに対し、報告と謝罪までしたノーマンならば。ノーマンはサブリナに対して本気だからこそ、そこまでして誠実であろうとするのだ。そしてその全てにより、ジャスティンがサブリナとの子供を作らないようにしていたことまでもが前リッジウェイ子爵夫妻に伝わったことだろう。


卵が先か鶏が先かと悩むような問題ではない。ノーマンの報告により前子爵夫妻は明らかにサブリナが利用されていたと知ってしまったのだ。


「ノーマン、おまえは付き合いの許可を取りに王都へ来たというのに、ファルコールを訪ねたわたしは父親になることの許しを与えなくてはいけないのか」

「お父様…」

「バルラトル…」

「父親にならせて下さい。ですが、何よりサブリナ様の夫になりたい…です」

「サブリナ、いいのか。この男は今後サブリナを泣かせないと約束出来るかというわたしの問いに『出来ない』と言ったのだぞ」

「お父様、それは当然よ。ノーマンはわたしに嬉し涙を与えてくれるのだもの」

「…そうか、分かった。ノーマン、約束どおり付き合いを許可しよう」

「ありがとう、お父様。でも、ノーマンとどんな約束をしていたの」

「サブリナの表情で判断すると伝えていた、付き合いを許可するかどうかは。しかし、あの時のノーマンの夫になりたいという望みも早々に叶えてやらんといけないな。ノーマンは父親に、サブリナは母親になるのだから」


前子爵の言葉を聞くや否や、サブリナは感極まって泣き出した。薫はそれを丁度いいタイミングと捉え、ノーマンにサブリナを部屋へ送り届けるよう合図した。前子爵の言葉を受けて、きっと二人だけで話したいこともあるだろうから。


二人がいなくなると、薫は前子爵夫妻へこれまでのサブリナについて話をすることにした。ここまでサブリナを支えたツェルカ、ノーマンの上司的立場のケビン、オランデール伯爵家が属するリプセット公爵家のジョイス、そして序にそのままハーヴァンに残ってもらい。ハーヴァンは前回王都へ戻る時に前子爵夫妻に世話になっているし、ケビンが上司的立場なら料理においてはノーマンの部下的立場なのだから。

しかし、薫が話し出す前に前子爵が立ち上がり深々と頭を下げ、再度その場にいた全員に礼を伝えた。そして、父親として娘の幸せそうな表情を見れて、自分こそ幸せで堪らなく嬉しいと伝えたのだった。


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