表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
オリハルコンの女~ここから先はわたしが引き受けます、出来る限りではありますが~  作者: 五十嵐 あお


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

577/673

318

ツェルカは然程時間を掛けずに戻ってきた。薫が意図した人物ではないジョイスを連れて。

薫の合図にコクリと良い頷きをツェルカは返してくれたというのに、どうしてジョイスなのか。そして連れて来られてしまったジョイスにあなたは間違いなのでお引き取り下さいともこの状況では言い辛い。


困った…。でも、ここはツェルカの行動の真意を考えなければいけない。薫は取り敢えず、こんな夜に女性の部屋に入るわけにはいかないと扉の傍に立ち続けようとするジョイスを中に入れたのだった。


その短い時間を利用し、薫はツェルカの真意を推し量った。

最初に思い付いたのは、貴族間の力関係。ジャスティンはオランデール伯爵家の人間。そのオランデール伯爵家はリプセット公爵家の派閥。だからジョイスに話を通しておくことが重要だとツェルカは考えたのではないかと。また別の見方も出来る。薫にはノーマンがこの問題を最も早く解決出来る人物に見えていたが、ツェルカには違っていたのだ。サブリナはノーマンと別れるべきではないかと考えている。それも、ノーマンやサブリナに他に好きな人が出来たなどの理由ではなく、長い時間を掛けてジャスティンに植え付けられた恐怖によって。だから本当は失いたくないであろうノーマンを今サブリナの前に連れてくることは危険だと感じたのかもしれない。場合によっては恐怖からサブリナがノーマンに別れを切り出すのではないかと。


どうすべきか。ここは目で合図ではなく、ツェルカに言葉でお願いするしかないと薫は思った。否、最初からそうしていれば良かったと。


因みにツェルカがジョイスを連れて来た理由は、薫が考えたような深いものではない。ツェルカも最初はノーマンを連れて来ようとしたのだが、その前にジョイスを見掛けた。そして閃いた、最近のスカーレットの傍にはいつもジョイスがいるのだから、あれはジョイスを呼んできて欲しいということだろうと。そして連れて来られたジョイスはというと、かなり心拍数が上がっていた。何故ならジョイスの目に映るスカーレットは薄いガウンを脱げば後は寝るだけという姿なのだ。顔に感情が表れないことが、今日ほど役に立つことはないとジョイス思わずにはいられなかった。それに、何かあった時に最初に頼ってもらえることが嬉しくもあり誇らしかった。


今度は言葉でツェルカへの指示をやり直すことにした薫は、先ずは簡単に今の状況をジョイスに伝えることに。けれどお互いに年齢が近すぎて女性の体の機能を話すには照れくさく、薫はその部分は極々簡単にさらっと伝えるに留まったのだった。


「サビィ、ツェルカにあなたの大切なノーマンを連れてきてもらいましょう。そして、わたしが先にあなたの状況を伝えるから、あなたは何も言わず待ってて欲しいの。ノーマンが何を言うか、しっかり聞きましょう」


これで今度はノーマンが間違いなくやって来る。そして薫はジョイスを見てどうしようと思った。その様子がジョイスには『頼りにしているわ』と映っていることなど知らずに。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ