王都リプセット公爵家23
折角二人きりになれる場所で愛以外のことを語らなければいけないのは、立場上仕方がないこと。それにこの空間では不満が顔に出ていようと、愛しい妻は笑いながら許してくれる。だからリプセット公爵は夫人の質問に表情を繕うことなく答えたのだった。
「ジェラルド、それでジョイスの読みへの評価は?」
「まずまず、否まだ甘い。オランデール伯爵に娘のことを聞いても『しらばくれる』は不正解だった。あの様子では自分の娘がオリアナという娘にサブリナを連れ戻すように命じたことは知らなかったな」
「まあ、お粗末だこと」
「それはどちらに対して?」
「両方とも。それにあなたもわたしも」
リプセット公爵夫人、エラルリーナはオランデール伯爵が周囲にクリスタルが反省していると見せる為だけに修道院に滞在させていると断言した上で、それでは意味がないと言い放った。重要なのはクリスタルが過去を振り返り、今後どうしていくべきか導くことだったと。何が悪かったのか、何を反省すべきなのか分からなければ、修道院に滞在しているだけだ。それも、父親に言われたからという理由で。
「伯爵令嬢は、与えられた大切な機会に何も気付きを得ないどころか、更に問題行動を起こした。それなのに、バザー前日の殿下との話を聞く限り、まだ何も分かっていない。いいえ、リッジウェイ子爵令嬢を手に入れたつもりでいたのでしょうね。今の伯爵令嬢はジョイスから殿下へ対象を移したってとこかしら、それも手に入れられると思い込んでいる。その思い込みを伯爵は根本から正してあげないと」
「ああ、その通りだ。最後の部分を聞くと、確かにジョイスに間違った思い込みを抱かせた僕と君もお粗末だった」
「ジョイスの思い込みはスカーレットに対してだけだった分、わたし達はまだ良かったのかも。問題はオランデール伯爵が子爵家や男爵家を軽視し、平民達を何とも思っていないこと。今回だって公爵家の力で侯爵家に取りなしてもらおうとしたのでしょう?」
「ああ。伯爵のその考えを見て育った令嬢が、商家の娘にリッジウェイ子爵令嬢を半ば誘拐させようとしたのも理解はし辛いが頷ける行動だ」
「馬鹿ね。公爵家は寧ろ他の貴族家や平民を守るよう立ち回らなければいけないのに。それぞれに役目がある。それをしっかりと果たしてもらわなければ、世の中が回らなくなって争いが起きるわ」
「オランデール伯爵がリッジウェイ子爵令嬢を嫁に取りたいと伺いを立てて来た時に、僕は案外良い所を突いてきたと思ったんだけどね。まあ、たまたまだったようだ」
「そうね、どこの派閥にも属さないということはそれだけ強い家門ということ。しかも子爵家でその立場なのに。それで、オランデール伯爵家をあなたはどうするの?」
この話をまだまだ続けなくてはいけないのかと思いながら公爵は、夫人の質問に未来の予想を含めて答えたのだった。
今年こそは完結しますように。
ただ長いだけの話にお付き合い下さり、皆様ありがとうございます。




