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オリハルコンの女~ここから先はわたしが引き受けます、出来る限りではありますが~  作者: 五十嵐 あお


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クロンデール子爵夫妻がファルコールを去った翌日、デズモンドとリアムが夕食を共にする為にファルコールの館へやって来た。そして出迎えた薫にデズモンドは開口一番、心配を口にしたのだった。


「約束だからと、夕食へ招くことに義務感を持たないで欲しい。無理な時はそう言って。キャロルに会う機会が減るのは辛いけど、大切な女性の為の懐の深さは常に持ち合わせているから、俺は」

「無理はしてない。でも、気遣ってくれてありがとう。今回のお客様達もとても良い方達だったから、仕事自体が楽しかったわ」

「それなら良かった。じゃあ、夕食後にその楽しかったことを俺にも話してよ。キャロルが楽しいと思うことを知りたいんだ」

「ええ、勿論。さあ、中に入って」



ジョイスが日々苦労していることを難なくこなすデズモンド。年齢の差でないことは明らかだ。仮にジョイスが今のデズモンドの年齢になったとしても、同じように出来ないのは目に見えている。

スカーレットが楽しいと思えることを話させ、その時の気持ちごと共有しようとしているのだ、デズモンドは。ジョイスの寄り添うは外側、デズモンドの共有は内側にまで入り込むかのように。ジョイスとデズモンドの今までの女性との距離感そのものだ。


ジョイスだって女性を褒める言葉は知っている。それに使ったこともある。でも、それだけ。息を吸うのと同じように繰り返される、誰もが使うお手本のような言葉を並べただけだ。言われた相手も直ぐに社交辞令と気付く言葉で、褒めながらある一定の溝を作って行く。デズモンドが言っていた相手を理解した発言でない以上、どんなに美しく装飾した誉め言葉でも、放った傍から簡単に消えて、残ることはない。


デズモンドとスカーレットの歩きながらも盛り上がる話を聞きながら、ジョイスはまた辛くなった。スカーレットはこんなにも対話に重きを置いている。あの頃の一方的にきつい言葉を放ち、スカーレットの言葉に聞く耳を持たなかった自分を出来ることなら数発は殴りたいと思った。


「じゃあ、デズ、続きは食事の後で」

「ああ、楽しみにしている。出来れば二人きりがいいと思うのは俺だけ、だろうな」

「ふふ、どうかしら」



夕食が始まると、ケビンが次のゲスト滞在中にトビアスもやって来るだろうと全員に向け連絡した。ジョイスにしてみれば、また会話力のある人物がここに加わることを意味している。


「既に国境検問所にはキャストール侯爵からの身元引受書類が来てたな」

「今回の滞在は長いものになると予想して、閣下は身元引受人になったようです」

「やっぱり長いってことなんだ」


八割方トビアスは長期滞在になると予想していただろうに、事実を提示しながら確認を取るデズモンドはやはり抜け目がない。それに加え、スカーレットを喜ばせる手土産を持参するトビアス。ジョイスはこれから更に自分に欠けているものを理解させられる日々が続くのかと思わずにはいられなかった。


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